ファッション誌の専属モデルとして活躍しながら、俳優としても注目される宮沢氷魚さん。初主演の映画では同性愛者の迅(しゅん)を演じた。恋人役の藤原季節さん(27)との濃厚なラブシーンなど、高い演技力が求められる役だった。
「最初は自然に演じられるか悩みました。でも迅を演じるにつれ、ひとりの人間が人間に恋をして愛する物語なんだと、男も女も関係ないと思えて」
迅は、宮沢さんいわく「恋人でも目も合わせない。相手ののどぼとけを見ているような」男だが、表情からは、気持ちが手にとるように伝わる。
「迅は派手なことはしない。見ている人には言葉以外で愛情や悲しみを感じさせなければいけないので、難しかったです」
迅の味方になってくれる老人役の鈴木慶一さん(68)との場面も印象的だ。
「キツイ場面もあったりするので、撮影中落ち込むこともあったんです。鈴木さんと一緒のシーンがあると、なんでも受け入れてくれる包容力というか、安心感のある方なので、心が楽になりました」
難しい役になりきれたことで、自信を得た。今後は俳優の仕事が増えそうだ。
「モデルも俳優も表現する点では同じ。洋服の見せ方をたくさん持つように、俳優としても演技の幅を広げたいです」
(本誌・工藤早春)
※週刊朝日 2020年1月31日号