■4位 『落花狼藉』朝井まかて

 江戸時代初期、幕府の公許を得た遊郭、吉原の黎明と、そこを舞台に生きた人々を描く。

 吉原にある遊女屋・西田屋の女将花仍は店の娘分として育った後、主の甚右衛門の妻となった。その主の願いはかない、お上から散在していた遊女屋を集めた「傾城町」をつくる許しを得るものの、相次ぐ難問に直面し、苦闘が続く。

「巨大遊郭吉原がどのようにできあがったのか、都市計画や経営の側面から描いた力作。町づくりの苦労や幕府との駆け引き、店同士の競争や協力など、吉原小説の新機軸だ」(書評家・大矢博子さん)

「吉原遊郭をテーマとした街づくり小説。非情になりきれず、情に厚いところもある女将の凛とした美しさが心に響く」(芳林堂書店高田馬場店・大内学さん)

■5位 『雑賀のいくさ姫』天野純希

 織田信長が天下統一をめざす戦国末期を舞台に、水軍の姫が活躍する海洋冒険小説。

 紀伊を本拠にする雑賀水軍の姫・鶴は、座礁したイスパニアの帆船を手に入れて改造し「戦姫丸」と名付けた。イスパニア生まれの若者らと琉球やフィリピン、ベトナムなどとの貿易をめざして南洋に向かう。しかし、明国の沿岸を本拠にする海賊・林鳳の大船団が九州制圧をうかがっていることを知り、西国大名と連合軍を組み、奄美大島沖で一大海戦に挑むことになる。

「作者が得意とする戦国ものと、作者が元々持つエンターテインメント志向が非常に高いレベルで結びついた快作」(文芸評論家・三田主水さん)

「奇想天外な想像力を駆使して、人物伝記の変化球や、教条的な作風に偏りがちな戦国ものに、大きな風穴を開けた海洋冒険小説の傑作」(文芸評論家・菊池仁さん)

■6位 『神を統べる者』荒山徹

 6世紀の日本。仏教導入を試みる天才少年・厩戸御子(後の聖徳太子)は、その異能を敏達天皇から危険視されて命を狙われる。豪族たちの協力を得て、国外へ脱出し、中国南部に辿り着くが、道教の教団に拉致される。なんとか仏教僧たちによって救出された御子は、次にインドをめざした。その地で覚醒した御子は、霊力を利用しようとする仏教の急進的一派に再び誘拐されてしまう。

 その頃、日本では仏教導入に寛容な用明天皇が即位する。御子は無事に帰国し、日本に変革をもたらすことができるのか。

「厩戸御子が主人公の小説で、これほど荒唐無稽な作品は『爆撃聖徳太子』(町井登志夫)以来。まさに伝奇小説の快作です」(「歴史街道」編集長・大山耕介さん)

「仏教伝来を動線に、聖徳太子の人物造形を、巧妙な作劇術、グローバルな視点の導入、奔放不羈な想像力を駆使して彫り込んだ斬新な古代史もの」(文芸評論家・菊池仁さん)

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