世界が注目すべき日本発の才人バンド・リーダーがここにあり
Groovin’Forward / Junko Moriya Orchestra
本欄ではあまり日本人の紹介に力を入れていないと思われるだろうが、今回は邦人ビッグ・バンドを紹介したい。97年にCDデビューした守屋純子は、99年に自己のオーケストラをスタート。2001年にリリースした同第1弾『シフティング・イメージズ』は、斯界の実力者たちをずらりと揃えた編成で、守屋の覚悟と決意が十分に伝わってくる仕上がりだった。邦人女性のBBリーダーというと、秋吉敏子が別格的存在として挙げられるだけで、ほとんど過去に例がなかった。それだけに守屋オケの出現を期待と共に見守った向きは多かったはずだ。守屋に転機が訪れたのは2005年。新作『ポインツ・オブ・デパーチャー』をリリースし、ミュージック・ペンクラブ賞を受賞。さらに若き才能を顕彰するセロニアス・モンク・コンペティションの作曲賞を獲得し、世界レヴェルで守屋の才能が認められたのは、まさに新たな日本の至宝が誕生した瞬間であった。
これは2006年リリースのセクステット作『プレイグラウンド』以来となるオーケストラの最新作だ。全10曲はオリジナル8曲+カヴァー2曲の構成。それぞれの楽曲は聴き応えがあって、ビッグ・バンド・ファンならすぐにツボにはまる美味処が多数用意されている。トシコからの楽曲書法とピアノ演奏の影響も感じさせる躍動的な#1、昨年76歳で逝去した先輩格のバンド・リーダーである高橋達也に捧げたバラード#5、ピアノ独奏をフィーチャーしたテーマ・メロディーが心に染みる#9と、自作曲それぞれがリスナーに訴えかけるメッセージ性に守屋の優れたバンド・リーダーのスキルを聴く。モンク・ナンバー#6は過去にもモンクを自分流にアレンジした実績がある守屋が、トランペットとサックス・セクションの対比的アンサンブルで楽曲に新しい生命を吹き込んでいる。ここで守屋を「日本のマリア・シュナイダー」と呼ぶのが最高の褒め言葉なのだろう。しかし敢えて言いたい。世界が注目すべき日本発の才人バンド・リーダーがここにいる、と。
【収録曲一覧】
1.Grooving Forward
2.Skyscraper
3.Late Summer
4.One For The MPCA
5.Farewell
6.Well You Needn’t
7.Minor Waltz
8.Beautiful Love
9.Thousand Cranes
10.This Is For Sammy
守屋純子(p,ldr) (allmusic.comへリンクします)
納浩一(b)
大坂昌彦(ds)
エリック・ミヤシロ(tp)
片岡雄三(tb)
近藤和彦(as,ss,fl)
小池修(ts,fl)