母子2人が亡くなった事故現場付近の実況見分に立ち会う飯塚元院長=6月13日 (c)朝日新聞社
母子2人が亡くなった事故現場付近の実況見分に立ち会う飯塚元院長=6月13日 (c)朝日新聞社

 妻とフランス料理店に向かうためにハンドルを握っていた老人は事故の瞬間、何を思ったのだろう。

 今年4月、東京・池袋で旧通産省工業技術院の飯塚幸三元院長(88)の運転する車が、横断歩道に突っ込んで通行人をはねるなどし、松永真菜さん(31)と長女莉子ちゃん(3)が死亡、8人が重軽傷を負った。運転していた飯塚元院長と、同乗していた妻も負傷した。

 捜査関係者によると、飯塚元院長は事故発生当初の聴取には「ブレーキをかけたが利かなかった」などと話したという。しかし、事故車の機能検査では異常はなく、警視庁は飯塚元院長がアクセルとブレーキを踏み間違えた可能性が高いとみていた。

 一方、12人が死傷する事故を起こしたにもかかわらず、逮捕されなかったことが、元院長の経歴などから「『上級国民』だからでは?」との臆測を呼んだ。警視庁関係者が説明する。

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