ペシャワール会によると、アフガニスタンには現地職員が約200人、作業員が約300人いるという。2年前には用水路の建設や維持の技術を学ぶ研修所を設けた。広報担当理事の福元満治さんは、「中村さんが残してくれた技術を現地でもしっかりと伝えていきたい」と話している。
政府の途上国援助などで活動を支えてきた国際協力機構(JICA)も支援を続ける方針だ。ペシャワール会とともに、かんがい技術の「教科書」(ガイドライン)づくりに取り組んでいる。
「中村さんが培ってきた技術や経験は、アフガニスタンのほかの地域でも活用できます。ガイドラインは現地の状況に合うように英語や現地のパシュトゥン語などでまとめていて、来年には完成する予定です。今回の事件は本当にショックで残念でしたが、中村さんがアフガニスタンの国民から広く愛されていたことが改めて分かりました」(山田順一理事)
中村さんは10月にはアフガニスタンのガニ大統領から名誉市民権を授与されていた。12月7日に首都カブールの空港であった追悼式では、ガニ氏もひつぎを担ぎ、飛行機に載せた。
「中村さんはアフガニスタンの貧しい人たちに尽くし、生活の向上に一生を捧げた偉大な人です」(ガニ氏)
中村さんとともに殺害された警備員や運転手ら5人について、現地の放送局「1TVNewsAF」のマディ・アクラキさんは次のようにツイッターで報じている。
「警備員チーフのエマル・マンドザイさん(36)には3人の娘と2人の息子を含む5人の子供がいます。運転手のザイヌラさん(30)には、3人の息子と3人の娘が残されました。警備員のアブドル・クドゥスさん(27)の一人娘は1歳です。警備員のジュマ・グルさん(30)には心臓病の娘がいます。警備員のサイード・ラヒムさん(30)には6人の子供が残されました」
大きな犠牲をともなった今回の事件。本誌にも読者から、「死を決して無駄にしてはいけない。後継者が必ず出てくるはずだ」といった声が寄せられた。
現地の治安が悪化するなど厳しい状況のなかで、支援事業をいかに継続していくかが問われる。
(本誌・池田正史、多田敏男)
※週刊朝日オンライン限定記事