アフガニスタンで銃弾に倒れた中村哲医師(73)の葬儀が、福岡市で12月11日にあった。中村さんはNGO「ペシャワール会」の現地代表などを務め、30年以上にわたって医療や農業用水路の建設などに取り組んできた。葬儀には知人やNGO関係者ら1千人以上が参列し、中村さんの思いを引き継ぐことを誓った。
一般市民も参加できるお別れの会は、2020年1月25日に福岡市内で開かれる見通し。
遺骨の一部は本人の希望に沿って、用水路で緑の大地に変わったかつての砂漠に分骨される予定だ。記念施設をつくることも検討されている。最後まで現場に立つことにこだわった中村さんは、アフガニスタンに戻ることになる。
葬儀ではひつぎにアフガニスタンの国旗がかけられた。中村さんとともに殺害された現地の警備員や運転手ら5人の遺影も置かれた。長男の中村健さんは5人を悼んで、次のように述べたという。
「最初に申し上げたいのは、父を守るために亡くなられたアフガニスタンの運転手や警備の方、そして残されたご家族・ご親族の方々への追悼の思いです。申し訳ない気持ちでいっぱいです。悔やんでも悔やみきれません。父も、もしこの場にいたら、きっとそのように思っているはずです。家族を代表し心よりお悔やみを申し上げます」
ペシャワール会によると、参列者からの香典は支援事業にあてる。4人の遺族にも見舞金などを支払う方針だという。
中村さんはアフガニスタン東部ジャララバードで12月4日、車で移動中に襲われた。遺体は9日に福岡に到着し、司法解剖の後に福岡県大牟田市の自宅に戻った。ペシャワール会の村上優会長は、中村さんの思いを引き継ぐことを宣言し、次のように語った。
「中村先生はもともと敵とか味方とかという関係を止揚というか、乗り越え、悪い人も良い人もいて人生だと、共生を求められていた。今回の事件は、本人の生きてきたそのものを体現した、『崇高』とも表現すべき犠牲だと私は受け止めています。私たちは中村先生が実践してきた全ての事業を継続し、彼が望んだ希望は全て引き継いでいきたい」