春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『春風亭一之輔のおもしろ落語入門 おかわり!』(小学館)が絶賛発売中!
春風亭一之輔(しゅんぷうてい・いちのすけ)/1978年、千葉県生まれ。落語家。2001年、日本大学芸術学部卒業後、春風亭一朝に入門。新刊書籍『春風亭一之輔のおもしろ落語入門 おかわり!』(小学館)が絶賛発売中!
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イラスト/もりいくすお
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 落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「ルーズ」。

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 今回はいつもの己のルーズさを懺悔したい。

 4年前くらいまでは1本余裕があったのだ。何のことかといえば、このコラムの原稿のストックである。何かのはずみでストックがなくなった。なぜだ? 今まで私は病気で休載とかあったっけ? まるで覚えていない。神隠しかも知れん。おーこわ。とはいえ、盆暮れとGWの合併号が出ると1週休みになる。その時に休まず書いておけば良いのだよ。でも私はバカ正直に休んでしまう。よって今、カツカツ。4年間ズーッとカツカツだ。「こんなユルい原稿で何を言うか?」とお思いかもしれないが、ご飯を硬めに炊くのも、お粥を煮るのも同じ労力がいるのだ。ご理解ください。

 この連載は金曜日が締め切り。私は金曜の朝からちょっと慌てだす。「ちょっと」だけど。初動、遅。お題を出されてから、それが何となく頭の片隅にフワフワ浮いているのだけども、手を出そうともしないルーズな自分。編集さんへのショートメールの履歴には「すいません! ちょっと遅れます!」「承知いたしました!」「申し訳ないです! 昼過ぎまでお待ちください!」「はい! お待ち致しております!」「今週もすいません!」「ガッテンです!」なんて文面が並んでる。ここ何年も毎週毎回同じやりとり。学習しないにもほどがある。

 ある土曜日の午前中。地方へ行く新幹線の中で、シコシコと慣れないスマホに向かっていると、弟子が横で居眠りしていた。「師匠が締め切りに追われているのに、このやろう……」

 すぐに弟子4名を緊急招集し、一列に並ばせる。「いーですか? 君たちにこれから毎週ひとつ、文章を書いてもらいます。私がテーマを与えてそれについて君たちが書く。文字数は1千字以上。土曜日が締め切りです。絶対に遅れないように!」。悔しいから弟子どもに無理やり課題を与えてやった。ざまあみろ。お前たちも締め切りに苦しみやがれ。「……はい、かしこまりました」。無表情で頷く弟子一同。いやなのかよ!? だが私は師匠。師匠の言うことは絶対である。

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