Since Forever (Dig)
Since Forever (Dig)写真・図版(1枚目)| 『シンス・フォーエヴァー/フレッド・サイモン』
この記事の写真をすべて見る

CDショップでスルーしてほしくない秀作!
Since Forever / Fred Simon

 日本では過小評価のヴェテラン鍵盤奏者である。音楽生活が35年になるが、キャリアの割りにはリーダー作が数えるほどで、それらはほとんど日本に紹介されていない。熱心なピアノ好きや輸入盤ウォッチャーがアンテナを張ってきた、というのが実情だろう。本作はそんな以前からのファンばかりでなく、サイモン初体験者にも勧めたい1枚だ。

 アルバム・タイトルを解釈すれば、過去から現在、そしてこれからも共演を続けるだろう音楽仲間との関係を示しているのではないだろうか。今回は曲によってミュージシャンが出入りするのではなく、全編4人編成のバンドで臨んでおり、3人の共演者全員がサイモンの88年作『Usually Always』(Windham Hill)に参加した実績がある。

 その後のアルバムでも各人がサイモンに協力してきた間柄だ。20年間にわたって断続的なパートナーシップを築いている面々とのカルテット作。このメンバーでユニットを組むことができたサイオンの喜びが、サウンドから溢れている。

 ロッカ・バラード調で始まり、ソプラノ・サックスとピアノが主旋律をリレーして、牧歌的な雰囲気を醸し出す#1と、ソプラノ&ピアノのユニゾンが心地よい旋律を紡ぐミディアム・テンポ#2の冒頭2曲で、サイモンの優れたメロディ・メイカーぶりを体感できる。ここで見逃せないのが、マッキャンドレスとウォーカーがオレゴンのメンバーであること。

 曲調と演奏の展開から想起できるこの老舗ユニットの音楽性が、本作のオーガニックな清冽さに最大級の貢献を果たしており、サイモンが目指すサウンド・コンセプトとの理想的な融合を聴くことができる。

 唯一のカヴァーであるジョー・ザヴィヌル作曲のマイルス・デイヴィス所縁曲#5が本作に置かれると、メロディ・ラインの美しさが際立って、選曲の適切さに納得。パット・メセニー・グループのロドビーがこのアコースティック・プロジェクトに協力したことを含めて、CDショップの店頭に溢れ返る輸入盤の1枚としてスルーしてほしくない秀作だ。

【収録曲一覧】
1.Since Forever
2.No War Nowhere
3.Even In The Evening
4.I Know You Know
5.In A Silent Way
6.More Often Than Not
7.Simple Psalm
8.Same Difference
9.Ways Of Seeing
10.What’s The Magic Word?
11.Song Of The Sea
12.Beginning/Middle/End

フレッド・サイモン:Fred Simon(p) (allmusic.comへリンクします)
ポール・マッキャンドレス:Paul McCandless(ss,oboe,ehr,b-cl,duduk)
スティーヴ・ロドビー:Steve Rodby(b)
マーク・ウォーカー:Mark Walker(ds,per)

2008年9月シカゴ録音

[AERA最新号はこちら]