テスタメント/キース・ジャレット
テスタメント/キース・ジャレット
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3年ぶりのソロ・アルバム、本年度最高作だ
Testament / Keith Jarrett

 2009年はキース・ジャレット・ファンにとって、非常に喜ばしい1年として締めくくることができる運びとなった。新作が年内に2枚もリリースされるのは、新作がゼロだった一昨年の状況を踏まえれば大収穫ということになる。年頭にはスタンダーズ・トリオの『イエスタデイズ』が登場し、四半世紀を超えるキャリアを誇りながら今も新鮮な音楽性を保っていることを伝えてくれた。本作は今年2枚目の新作で、2006年秋発表の『カーネギー・ホール・コンサート』(2005年9月録音)以来、3年ぶりのソロ・アルバムということでも注目度が高いが、それだけにとどまらないポテンシャルを持っている。

 キース・ファンならば数多くのチェック・ポイントが発見できるはずだ。まずは3枚組というヴォリューム。LP時代には『ソロ・コンサート』『ヨーロピアン・コンサート』が3枚組だったが、CD時代になってからは本作が初めて。前人未到のこのジャンルを切り開いてきたキースの原点である73年の『ソロ~』から35年を経て、国の異なる2都市の音源をカップリングしたことに、キースの特別な思いが重なる。

 ディスク1は『パリ・コンサート』から20年後の同じサル・プレエルでのコンサート。ディスク2&3は英国では実に18年ぶりのソロ・コンサートだった。キースは90年代末に約2年間の療養生活を経てカムバックしてからは、以前よりもソロ・コンサートの活動をセーヴしており、本作の2公演を含む2008年はわずか6回のステージにとどまっている。つまり2000年代のキース・ソロは益々お宝度が高まっているというわけだ。

 アルバム名の「テスタメント」は第一義的に「遺言」。

 キースが本作をもってソロ活動を封印することを示唆するのかと不安がよぎったが、「(神と人との)契約」「信条表明」の意味もあって、こちらがキースの本意ではないかと思い一安心。大半が10分以内の即興曲からなるプログラムは、各楽曲がキース・ソロのいくつかのパターンに分類されるが、しかし過去のどれとも同じものではない。そしてディスク3のラストまで聴き進めてくると、最高の感動が用意されている。新たに歴史の1ページを刻んだ、本年度最高作だ。

【収録曲一覧】
Disc-1: Paris Part I~VIII
Disc-2: London Part I~VI
Disc-3: London Part VII~XII

キース・ジャレット:Keith Jarrett(p) (allmusic.comへリンクします)

2008年11月26日パリ、同年12月1日ロンドン録音