スケートカナダで優勝し、会場のファンの声援に応える羽生結弦 (c)朝日新聞社
スケートカナダで優勝し、会場のファンの声援に応える羽生結弦 (c)朝日新聞社
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 演技を終えた羽生結弦は片手の拳をぐっと握り、満足そうな表情で「くまのプーさん」のぬいぐるみの雨が降り注ぐ会場内を見渡した。そして足元の氷をねぎらうように、ポンポンとたたいた。

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 10月26日にカナダ・ケロウナであったフィギュアスケートのグランプリ(GP)シリーズ第2戦・スケートカナダの男子フリー。羽生は圧巻の演技で優勝した。ループやサルコーなど4度の4回転ジャンプを成功させ、前日のショートプログラム(SP)に続いてほぼノーミスだった。

 フリー212.99、総合322.59という得点は、昨季のルール改正後の自己ベストを更新。男子の今季最高得点でもある。

「久しぶりに、心の中から自分に勝てたなという演技でした。SPとフリーを(ノーミスで)そろえるということがなかなかなかったので、そのこと自体がうれしかったです」

 9月のシーズン初戦、オータム・クラシック(カナダ・オークビル)では優勝したものの、4回転サルコーなどでミスが出た。完璧主義の羽生にとって、到底納得できる内容ではなかったのだ。だが、スケートカナダではSPとフリーで計6本の4回転を成功させて、2位のナム・ニュエン(カナダ)に60点近くの大差をつけた。

「これまでやってきたことが肯定されたような気がしました。その肯定感と、勝つために必要なことをすり合わせながら練習していかなくてはいけないと思っています」

 と喜びを表現しながらも冷静に次を見つめる。

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