監督が、映画の宣伝活動の中で何度も「野村くんには助けられた。現場を盛り上げてくれた」と発言していたので、それについて質問すると、「特に何もしてないです」とぶっきらぼうに呟く。ただ、過去に出演した映画のインタビューのことを思い出すと、野村さんほど、現場で愛される俳優はそうはいないのだ。明るくて、サービス精神が旺盛で、オープンマインド。それゆえに、私生活の交友関係も自然と華やかになる。ビッグマウスのように見えるけれど、本当は照れ屋。「帝一の國」で、共演者から褒められた時は、耳を真っ赤にして下を向いていた。彼が“誤解されやすい”のは、「場を面白くしよう」というサービス精神が、日本では“生意気”とか“でしゃばり”に映ってしまうことがあるせいなのだろう。

「今回は、監督の初監督作品ってこともあり、助監督の人とかがいろいろアドバイスしていたんです。でも、僕は監督がやりたいようにやればいいと思った。待ち時間に僕の近くに来た時は、『今話したい気分なのかな?』と察して、『監督が好きなカットを撮ればいいんじゃないですか。俺は、そこについていくだけなんで』って伝えました。監督に何か言ったことがあるとすれば、そのくらいです。

 この作品に関わることで、発声を治す音楽療法があることなんかも知ったし、音楽が、いかに人の心に作用するものかを、役を通して実感できました。主人公のアトムにとっては、ラップは命の恩人のようなもの。僕も、音楽とか芝居とかスケボーとか、好きなものがたくさんあるんですが、人生の岐路に立つたびに、結局は好きなものに救われているんだなと実感します」

 彼にとっては、音楽も芝居もスケボーも、国境や世代を超えた、大切なコミュニケーションツールだ。

「ニューヨークでは、街でスケボーしてても怒られないんです!(笑) 他人は他人、自分は自分という空気感が、今の自分にはすごく心地いい。頑張って英語を身につけて、いずれは、海外作品のオーディションが受けられるぐらいにはなりたいと思っています」

(取材・文/菊地陽子)

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