この30年間で日本経済が世界でダントツのビリ成長だった以上、運用益が十分に積み上がるわけがない。低成長で景気が悪ければ株価は上昇しないからだ。
1989年末に3万8915円をつけた日経平均株価は、約30年後の現在2万円強で約半分。一方、当時2753ドルだったNYダウは現在9倍超。米国人が将来の年金支給に危機感を抱いているとは聞いたことがない。
景気が悪ければ、年金の主たる運用先である債券の利回りは低く、運用益は積み上がらない。要は年金を持続可能性があるものにするためには、日本経済の成長をせめて世界平均並みに持ち上げることに尽きる。
もし政府が枝葉の問題ばかりに気を取られ、この低迷からの脱出法を見いだせないのなら、個人は手持ちの資金を外貨建て商品で運用するしかない。公的年金は政治上、為替リスクを取りにくいため、国内に投資する傾向がある。
このまま日本経済が低迷するなら、年金は持続不能になる。個人は経済成長している強い国に資金をふりわけ、果実をとるべきだ。それが低迷経済持続、年金破綻(はたん)という最悪シナリオで、個人が生き残る手法である。
※週刊朝日 2019年9月20日号