“伝説のディーラー”と呼ばれた藤巻健史氏は、年金が破綻したとき、個人が生き残る方法を披露する。
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7月の参議院議員選挙中、落語家の三遊亭楽麻呂師匠とパーティーでお会いしたら、「藤巻さんとかけて陣痛が起きた女性と解く」と謎掛けをしてくださった。その心は「早く産院(参院)に送りたい」だった。
私はこの選挙の最後に決まった落選者となった。1467票足りずに次点だった。「応仁の乱」(1467年~)と偶然の一致。投開票日翌日の早朝に落選が判明した時は熟睡中で、長男ケンタに「落ちたよ」と揺り起こされた。「よくこのツバ競り合いの最中に寝られるよな」と言われたが、結果が変わるわけではない。
ディーラーを経験してきたので立ち直りも早い。何十回、何百回とこれまでも勝負に負けてきた。もちろん、それ以上に勝ったことも多かったが、負けるたびに落ち込んでいたらノイローゼになってしまう。気持ちの切り替えは、ディーラーとして生き延びるための必須条件だったのだ。
という経緯で、コラムを再開することになった。累積赤字を放置して異次元の金融緩和をすれば、出口がなくなり大変なことになると、国会議員時代から主張し続けてきた。今後12回にわたり、このコラムの総まとめをしていきたい。
8月21日、ブルームバーグが、「GPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が過去3カ月の間に株式と債券、為替ポジションで損失を出したようだ」とのニュースを伝えた。
年金の財政検証の結果を受けて、年金問題は臨時国会で大きな論点になる。政府にとって実にタイミングが悪いニュースだ。
年金の持続性が揺らぐ原因を少子化のせいにする論調が散見されるが、少子化は制度設計に織り込まれていた。想定外だったのは、十分な運用益が上がらなかった点にある。これが年金の根本的な問題なのだ。
私的年金で考えてもらいたい。若いころに100万円を預けたとしよう。それを保険会社などが運用して、65歳から毎月分割で支払ってくれる。何十年も運用して100万円を105万円に増やしてくれても、うれしくはない。200万円、300万円に増やしてくれてこそ、入る意味がある。公的年金も同じだ。