前出の京アニ社員もこう話す。
「木上さんは制作現場を見守り、支えてくれる、懐の深い人でした。私も多くを学ばせてもらった。京アニの精神的支柱でした」
津田幸恵さん(京都市伏見区・41)は、京アニの人気アニメ「けいおん!」「響け! ユーフォニアム」などで仕上げを担当していた。津田さんの父、伸一さん(69)はこう話す。
「7月28日に葬儀を執り行いました。もう、なんというか、語りかけることもお別れをいうこともできません。ただ、ショックでため息が出るばかりです。娘は2階で仕事をしていたそうで、窓の方に逃げようとしたようです。しかし、煙が一瞬にして覆いつくし、一酸化炭素中毒になって、力尽きたようです。その後、炎が襲ってきたと警察から聞きました。娘がいた付近には、他の社員さんも折り重なるようにして、亡くなっていたそうです。娘が大事に飼っていたネコは、いま、こちらで引き取りました。もう言葉もありません。娘を返してほしい、それだけです」
先の京アニの社員はこう話す。
「社員同士、誰が亡くなられたかわかっていますが、会社ではそんな話をするような雰囲気じゃない。こうして公表されるとますます、犯人への怒りがこみあげてくる。放火現場から逃げ出し、難を逃れたアニメーターも何人かは出社して仕事をしている。いい作品を世に送すこと。それが一番の弔いであり、犯人へのリベンジではないか思います」
府警が身元を公表した残りの7人は、京都府宇治市、宇田淳一さん(34)、京都府宇治市、大村勇貴さん(23)、京都市伏見区、笠間結花さん(22)、京都市東山区、栗木亜美さん(30)、京都府宇治市、西屋太志さん(37)、京都市伏見区、横田圭佑さん(34)、京都府井手町、渡辺美希子さん(35)。
(今西憲之)
※週刊朝日オンライン限定記事