カリベ(DVD付)
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ライヴ録音から作品化まで16年を要した特別なステージの記録
Caribe / Michel Camilo Big Band

 ドミニカ共和国が生んだ唯一の世界的ジャズ・ピアニストがミシェル・カミロだ。キャリア初期の1980年代に日本制作によるアルバムで名が知られ、それがアメリカに逆輸入されてヒットしたことで、米メジャー・デビューにつながった。毎年の来日公演が恒例になっている親日家である。

 本作は学業のため79年にNYへ渡り、卒業後も同地を拠点にプロ活動を行って名声を獲得したカミロが、実に15年ぶりに母国に凱旋帰国したライヴ&ドキュメンタリー作(CD+DVD)だ。

 94年5月、カミロは自身初となるビッグ・バンド作『ワン・モア・ワンス』を録音。レギュラー・トリオにジョン・ファディス、クリス・ハンター、デイヴ・バージェロンら豪華ホーン・セクションが加わって、お馴染みのレパートリーが大編成ヴァージョンとして生まれ変わった内容だった。同年秋のリリースをはさみ、録音から7ヵ月後に行われたのがこの帰国ライヴというわけである。この晴れ舞台のために、レコーディングの主要メンバーがドミニカに再結集。全7曲はすべて『ワン~』収録曲から選ばれており、この大型プロジェクトはカミロの凱旋にふさわしいタイミングでの実現となった。

 ところでライヴ録音から作品化まで16年を要することになったのは、いささか時間がかかり過ぎの感は否めない。この間カミロはEpicからTelarcへ移籍して、交響楽団との共演作に挑戦するなど、活躍の場は拡大の一途を遂げている。権利関係をクリアしてようやく今回、アルバム化に漕ぎ着けたことに、カミロの執念を感じる。かなりの年月が経ったとは言え、自分にとって特別なステージであるその価値は不変のもの。世界中のファンに映像作品と共に楽しんでほしい、との強い思いを抱き続けてきたからこその快挙である。

 カミロのピアノ・スタイルがそうであるように、パワフルでダイナミックかつタイトなラテン・ビッグ・バンドならではのサウンドが展開されている。4トランペット+4トロンボーン+5サックスのフル・サイズだから、ホーンズの分厚い迫力たるや超弩級だし、ジャクソン&アーモンドにパーカッションが加わったリズム・セクションは大編成をドライヴさせるに充分なエネルギーを発揮。CDと同内容のDVDではカミロの指揮や打楽器演奏を楽しめるのも、大きな収穫だ。さらにボーナス映像ではパキート・デリヴェラが加わったコンボのライヴや、ピアノ・ソロ&ドキュメンタリーも収められていて、当時のカミロを多角的に知ることができる。アルバム発売記念となるカミロ初のビッグ・バンド公演は、初演メンバー多数と共にいよいよ10月21日からスタートだ。

【収録曲一覧】
1. Why Not!
2. Dreamlight
3. Suite Sandrine Part III
4. Suntan
5. Just Kiddin’
6. Not Yet
7. Caribe

ミシェル・カミロ:Michel Camilo(p) (allmusic.comへリンクします)
アンソニー・ジャクソン:Anthony Jackson(b)
クリフ・アーモンド:Cliff Almond(ds)
クリス・ハンター:Chris Hunter(as,ss)

1994年12月ドミニカ共和国でライヴ録音