ケース1 両親を介護した後妻に自宅を残したい (週刊朝日2019年7月26日号より)
ケース1 両親を介護した後妻に自宅を残したい (週刊朝日2019年7月26日号より)
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ケース2 妻の死後に自宅を妻の親戚に渡したくない (週刊朝日2019年7月26日号より)
ケース2 妻の死後に自宅を妻の親戚に渡したくない (週刊朝日2019年7月26日号より)

 相続に悩みはつきない。自宅を相続した先妻の子に後妻が追い出されたり、子なしの夫婦が死んだ場合、付き合いのない妻の親族に大切な自宅が渡ってしまったりする可能性もある。7月1日から大幅に変わった相続のルールを使って円満解決する方法を教えます! ライター・森田聡子氏が専門家に聞いた。

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■ケース1 両親を介護した後妻に自宅を残したい

 群馬県在住の男性(80)は最近、持病が悪化し、床に伏せっている時間が増えた。

「いやが応でも自分の死後のことを考えてしまいます。まだ若い妻(64)が不憫で……」と嘆息する。

 男性が45歳のときに最初の妻が病死、男性と要介護状態の両親、中学生だった長男(48)が残された。

「周囲の勧めもあって、1年後には現在の妻と再婚しました。妻は当時20代でしたが、文句一つ言わずに両親を看取ってくれました」

 両親は後妻の献身的な介護に涙を流して感謝したという。しかし長男だけは後妻に心を開かず、2人の微妙な関係は今に至るまで続いている。

 男性が住む村には本家相続の慣習があり、長男が自宅を引き継ぐのは既定路線。今は隣町の借家に住む長男もそれは承知している。

「なのに、結婚したり、孫が生まれたりしたタイミングで家に入るよう誘っても、息子は頑として首を縦に振りませんでした。妻との同居が嫌だったのでしょう。そうはいっても、私のほうが妻より先に逝くのは間違いない。2年ほど前には息子に妻との養子縁組を持ちかけましたが、やはり答えはノーでした」(男性)

 後妻は最近、男性が亡くなって長男が家を継ぐと決まったら、自分は老人ホームに入居するつもりだと話しているという。だが、後妻には婦人会などを通した村の友人も多く、「本音はこのまま家に住み続けたいはず」と男性は推測する。

「息子に対して、打つ手はすべて打ちました。後は息子の心変わりを願うばかりですが、私には悠長に待っている余裕はありません」(同)

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