しかし、「おしん」の迫力が災いしているのか、BS派の視聴者にとっては「なつぞら」がどうにも「ぬるく」映ってしまうようなのだ。
「おしんは関東大震災も戦争も、もろにかぶり、少女時代から常に敵役と呼べる存在がいて、しかも、そのリアリティーも見事。綿菓子的な作品に慣れた現代の視聴者にとって、かみごたえのあるドラマが突然現れた。若い世代にとっては新発見であり、一度見た人もいろんな体験を重ねたことで、より深く感じられる」
上智大学の碓井広義教授(メディア文化論)はそう指摘する。
「ドラマというものは基本的には葛藤の連続で構成されているのですが、『なつぞら』はその葛藤さえも、どこか緩い雰囲気がある。東京大空襲にもあまり緊迫感を感じられず、周りもいい人ばかりです」
「おしん」の再放送は、「なつぞら」が終了した後も続く。101作目の戸田恵梨香主演「スカーレット」も、昭和の名作の陰影をかえって深く映しだすのか。(本誌・太田サトル)
※週刊朝日 2019年7月19日号