『ウッドロアー』(Prestige)
『ウッドロアー』(Prestige)
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●白人パーカー派アルト奏者のトップに君臨

 白人パーカー派アルト奏者のトップに君臨するのがフィル・ウッズだ。チャーリー・パーカーに心酔のあまり、パーカーの未亡人と一緒になってしまうところなど、気合の入り方が違う。しかしウッズは単なるコピー・キャッツ(物まね小僧)には終わらなかった。パーカーの奏法をコピーしつつも、その中にオリジナルな個性を盛り込むことに成功した。

 もっとも、そのこと自体は珍しいことではなく、ジャッキー・マクリーンやキャノンボール・アダレイ、そしてソニー・クリスといったパーカー派アルティストたちも、それぞれの個性でファンを惹きつけている。つまりパーカーの奏法はその中で多くのミュージシャンが個性を発揮できる、大きな入れ物ということも出来るだろう。

 それでは、大枠はチャーリー・パーカー・スタイルだとして、フィル・ウッズが他のパーカー派と違うところはどこだろう。私は音色だと思う。ウッズのアルト・サウンドは一聴してそれと分かる。厳密に言うと50年代のサウンドと、60年代後半、ヨーロッパに渡って現地のミュージシャンと「ヨーロピアン・リズム・マシーン」を結成してからではずいぶん違うのだが、それでも両者に共通したウッズ・カラーは聴き取れる。

●ウッズの魅力

 明るくなめらかで艶がある。そしてメタリックという表現と隣り合わせの輝きが、彼のアルト・サウンドの特徴だ。もちろん彼の個性は音色だけではなく、ホンのすこしセンチメンタルな香りのする哀愁を帯びたフレージングが彼の聴き所だ。多くのウッズファンはそこに魅力を感じているのだと思う。

 『ウッドロアー』(Prestige)はそうした彼の魅力が最大限に発揮された、彼の50年代の代表作である。前述した「ヨーロピアン・リズム・マシーン」のように、音色がメタリックに過ぎることもなく、後期の特徴であるハード・ボイルドなウッズとは違った、心持ち哀感を帯びたフレーズが、なめらかで艶のあるサウンドに乗って繰り広げられる。

 また、パーカー派はテクニシャンであることが要求されるが、ウッズはその点でも申し分ない。つまりフレーズが小気味良く次から次への繰り出される快感も、このアルバムは満たしてくれる。何の屈託もなくジャズを聴く快楽に身をゆだねさせてくれるという点では、ジャズを聴き始めたばかりのファンでも、容易にこのアルバムの魅力に浸れることだろう。

【収録曲一覧】
1. ウッドロア(テイク3)
2. フォーリング・イン・ラヴ・オール・オーヴァー・アゲイン
3. ビー・マイ・ラヴ
4. オン・ア・スロウ・ボート・トゥ・チャイナ(テイク3)
5. ゲット・ハッピー
6. ストローリン・ウィズ・パム
7. ウッドロア(テイク1) (ボーナス・トラック)
8. ウッドロア(テイク2) (ボーナス・トラック)
9. オン・ア・スロウ・ボート・トゥ・チャイナ(テイク1) (ボーナス・トラック)
10. オン・ア・スロウ・ボート・トゥ・チャイナ(テイク2) (ボーナス・トラック)

フィル・ウッズ:Phil Woods (allmusic.comへリンクします)

→サックス/1931年11月2日-