大切なことは長く働くこと(getty images)
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野尻哲史(のじり・さとし)/1959年、岐阜県生まれ。2019年5月から、運用・移住・仕事など多面的に退職後のお金との向き合い方を発信するフィンウェル研究所の代表。主な著書に『定年後のお金』(講談社+α新書)、『脱老後難民』(日本経済新聞出版社)など (撮影/写真部・掛 祥葉子)
野尻哲史(のじり・さとし)/1959年、岐阜県生まれ。2019年5月から、運用・移住・仕事など多面的に退職後のお金との向き合い方を発信するフィンウェル研究所の代表。主な著書に『定年後のお金』(講談社+α新書)、『脱老後難民』(日本経済新聞出版社)など (撮影/写真部・掛 祥葉子)

 フィンウェル研究所代表の野尻哲史さんが、「定年後の生活」について綴る「夫婦95歳までのお金との向き合い方」。本当に必要な生活資金の総額は?
 
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 私は20年以上も投資教育に携わっています。その私は2019年4月に60歳となり、平成の終わりとともに定年を迎え、定年後の生活は令和とともにスタートしました。この連載では、定年を迎えた私、野尻哲史がどういった「定年後の生活」を送っていこうとするのかもお届けしていこうと思います。

 ところで新しい天皇陛下のご年齢は59歳です。今や60歳定年ではなく65歳定年の時代と言われますが、59歳から最も忙しい時期を迎えられるというのは、60歳定年を迎えた者にとっては、なんとも形容しがたいものがあります。

 しかし我々も定年を迎えたからといってのんびりしていられません。人生100年時代なんていわれていますから、60歳を過ぎても働くということは大切なことになります。

 多くの雑誌で「人生100年時代を生き延びるためには資産運用は避けられない」といった言い方をされます。自分もそうしたタイトルのセミナーでよく講演をさせていただきますが、実は資産運用は、退職後のお金との向き合い方の三つの対策の一つにすぎません。長く働くこと、生活を質素にすること、そして資産運用で生活資金を作り上げること、の三つが大切な考え方です。

 この三つの対策については、改めて説明をさせていただくことにしますが、その中で一番大切なことは長く働くことだと思っています。退職後の生活で必要となる生活資金の総額は、1年間に使う生活費とその費用を使う年数を掛けて計算することができます。すなわち、

[退職後の生活必要総額=年間の生活費×退職後の生活年数]

 となります。ここからわかることは、退職後の生活年数を減らすことができれば、生活必要総額を減らすことができるということです。でも、早く死ぬということではありません。退職後の生活に入る年齢を少しでも遅らせる、つまり、長く働くことが重要なのです。

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