『ALICE AGAIN 2019-2020 限りなき挑戦―OPEN GATE―』として巡演しているアリスの東京公演を見た(6月6日、日本武道館)。
谷村新司、堀内孝雄がアリスを結成したのは1971年。「走っておいで恋人よ」でデビューし、矢沢透が加わったのは72年。デビュー当初は芽が出なかったものの、「今はもうだれも」をきっかけに立て続けにヒットを放ち、日本武道館での連続公演やスタジアム公演などを繰り広げてきたが、81年に活動を休止した。
復活を何度か繰り返し、今回は6年ぶり、6度目の活動再開。それも谷村、矢沢ともにすでに70歳を超え、堀内も今年の10月にはその仲間入り。再始動を望むファンの声と“自分たちでもやりたい”という気持ちが合致し、今回のツアーは実現したという。
今回の再始動でのライヴについて“70歳の「限りなき挑戦」”と勇ましい。年輪を踏まえた“大人”の味わいを聞かせるライヴを想像していたが、それは見事に裏切られた。
「LIBRA―右の心と左の心―」を幕開けに冒頭から5曲、一気にパワフルな歌と演奏を披露。谷村の12弦ギターのリズム・ストローク、時にリード・プレーを交えた堀内のギターを軸に、サポートのSUPER SON’S BANDと一体化したバンドのアンサンブルは、70年代のAOR的なロック・スタイルを今日化したもの。その中核をなすのがリズムをキープする矢沢のドラムスだ。
それにもまして谷村と堀内のヴォーカル・アンサンブルが見事だった。ふたりが交互にリードを取り、ハーモニーを聞かせるツイン・ヴォーカル・スタイルは、アリスの看板だ。
張りのある谷村の歌声はゆとりもあっておおらかさを増し、堀内は時にコブシ交じりの歌いぶりに個性を発揮しながら、低音部の充実がふたりのハーモニーに膨らみをもたらす。観客に唱和を呼び掛けた「今はもうだれも」には懐かしさがこみ上げる以上に、その新たな解釈に聞き入った。「冬の稲妻」や「ジョニーの子守唄」もしかりだ。