

落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「チケット」。
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先日、2020年東京五輪のチケットの抽選販売申し込みが私の知らないうちに開始され、そして知らないうちに締め切られた……らしい。
完全に出遅れた。いや、行く気はまるでないのだけれど、「ちぇっ! せっかく申し込んだのにー。やっぱ外れたよっ! さすが五輪っ!」くらい言いたいじゃないか。
抽選に外れてもこれから随時チケットの販売はされるそうだ。転売も多いのだろうと思ったら五輪はチケット転売絶対NO! 非公式にチケットを手に入れても入場は不可能らしい。けっこうなことだ。落語会のチケットもかなり転売されている。不肖わたくしめの独演会チケットも、転売サイトをみると定価より高値で売買されていて驚く。
最初はちょっと嬉しいようなくすぐったいような気がしたのが正直なところだ。ある意味評価されてるってことかなと。バカだね。でもある日の独演会で、完売なはずなのに幕が開くと最前列がほぼ空席なのを見てふつふつと怒りがわいてきた。チケットが売れているのにお客がいない、買いたいのに買えない人がいて、押さえられたチケットは宙に浮いたまま……。万歩譲ってだな、買い占めた奴! お前が来いやっ!!である。
17年前、前座になって1年目。初めての勉強会は上野黒門町の落語協会の座敷だった。講釈師の一龍斎貞橘と前座同士の二人会。キャパ40人。彼は大学の同期なので、必死でかき集めた20名ほどのお客さんはほぼ学生時代の友達だった。隔月で2年やった。前座の会だし満員になることはなかったが、先輩をゲストによんでいい勉強になった。先輩のなかにはギャラを受け取らずお小遣いまでくださる方もいた。