サード・ラウンド/マヌ・カッチェ
サード・ラウンド/マヌ・カッチェ
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音楽家=マヌ・カッチェの魅力
Third Round / Manu Katche

 ジャンルを横断しながら活動を続けてきたドラマーである。1958年パリで生まれ、80年代から欧米のロック、ポップス、さらにワールド系ミュージシャンをサポート。ピーター・ガブリエルやスティングとの共演を通じて、その実力者ぶりが世界的に広まった。カッチェは10代半ばでマイルスやコルトレーンでジャズに触れ、ECMに強く惹かれた経験がある。ECMのプロデューサー、マンフレート・アイヒャーがカッチェ参加のロビー・ロバートソン盤を聴いて感銘を受け、89年のECM20周年記念コンサートにブッキング。この時にトリオで演奏したことがきっかけとなり、カッチェはヤン・ガルバレク・グループのメンバーに迎えられ、本格的なジャズ・キャリアをスタートさせた。その後ガルバレクから離れた時期もあったが、2004年に復帰しており、2009年発売の最新作『ドレスデン』で好演を印象付けている。

 2004年にガルバレクとトーマス・スタンコおよび側近のポーランド新世代を得て、ECMへの移籍作を吹き込み、カッチェはECMとの関係をさらに強化。2007年の第2弾『プレイグラウンド』ではマルチン・ボシレフスキ(p)+スワボミル・クリキエヴィッツ(b)とのリズム隊はそのままに、フロントがマティアス・アイク(tp)+トリグヴェ・サイム(ts,ss) のノルウェーの新世代に交代。全編自作曲をNYで完成させて、北欧との関係をさらに深めた。ここまでキャリアを積み上げてきたカッチェは、この3年ぶりのリーダー作にあたって、メンバーを刷新する冒険に出た。その心境を探れば、アイドルだったガルバレクを入り口に、豊穣で人材豊富なノルウェーのミュージシャンとの交流を重ねた成果が、制作のバックボーンになったと想像できる。

 ECMでの第3弾、の意味をアルバム名に織り込んだ本作は、昨春、輸入盤が入荷していたが、1月末から行う来日ツアーに合わせて国内盤としてもリリースされる。ガルバレク直系で近年はトルド・グスタフセン+ケティル・ビヨルンスタとのトリオ・プロジェクトをECMから出したサックスのトーレ・ブリュンボルグ、89年にウエイン・ショーターを迎えた初リーダー作を発表している英国の鍵盤奏者ジェイソン・リベロ、ジャズ~フュージョン~ロック~ソウル畑での経験が豊かなベーシスト、ピノ・パラディーノとのクァルテットを基本として、一部にギターと女性歌手が加わる編成だ。カッチェのドラム・セットは太鼓もシンバルも数が多く、したがって手数の多いタイプなのだが、だからと言って叩き過ぎることはない。むしろアルバム全体のバランスを意識したバンド表現に腐心しており、メロディアスで繊細なサウンドがちりばめられた仕上がりだ。すべての楽曲を自ら作曲したことを含め、トータルな意味での音楽家=マヌ・カッチェの魅力が堪能できる。

【収録曲一覧】
1. Swing Piece
2. Keep On Trippin’
3. Senses
4. Being Ben
5. Une Larme Dans Ton Sourire
6. Springtime Dancing
7. Out Take Number 9
8. Shine And Blue
9. Stay With You
10. Flower Skin
11. Urban Shadow

マヌ・カッチェ:Manu Katche(ds) (allmusic.comへリンクします)
トーレ・ブリュンボルグ:Tore Brunborg(ts,ss)
ジェイソン・リベロ:Jason Rebello(p,el-p)
ピノ・パラディーノ:Pino Palladino(b)

2009年12月フランス録音

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