帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など多数の著書がある
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※写真はイメージです (Getty Images)
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 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。死ぬまでボケない「健脳」養生法を説く。今回のテーマは「太極拳」。

*  *  *

【ポイント】
(1)太極拳には養生法として二つのポイントがある
(2)套路の歓喜と原穴への刺激が生命を高める
(3)よりよく老いるナイス・エイジングを求めよう

 この連載も最終回になりました。最後に私が愛してやまない太極拳についてお話ししたいと思います。

 とはいっても、太極拳の習得はそんなに簡単ではありません。中国に行くと、太極拳の達人に出会うことがあります。そういう方に「何年ぐらいされているのですか」と聞くと、たいてい40年、50年という言葉が返ってきます。とにかく何十年と続ける。それが太極拳習得の方法です。

 私はまだ始めて三十数年ですが、それなりにわかってきたことがあります。

 太極拳には気功としての調身(姿勢を整える)、調息(呼吸を整える)、調心(心を整える)という効用があります。それにプラスして、認知症予防にもつながる養生法としてみると、大事なポイントが二つあるのです。

 ひとつは套路(とうろ)です。太極拳の型は一連の流れになっていて、それを套路といいます。套とは大きくて長いという意味の言葉です。中国で手に入れた『太極拳全書』(人民体育出版社)では「長江大河の如く 滔滔不絶 一気呵成」と表現されています。

 長江とは揚子江、大河とは黄河のことです。滔滔とは水が流れるさまで、不絶とは途切れないこと。轟轟たる大河の流れが目に浮かんできます。つまり套路とはダイナミズムの極致なのです。

 最近になって、私が太極拳にときめきを感じるのは、この套路のダイナミズムのせいだとわかりました。太極拳を舞って、そのダイナミズムから生まれる歓喜に包まれないようではまだまだなのです。

 もうひとつのポイントは原穴への刺激です。中国医学では原とは生命の根源ともいえる原気を指します。原気が不足しているときには経穴を刺激して自然治癒力の向上を図ります。そのときに用いられる経穴が原穴なのです。

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