文部科学省で事務次官を務めた前川喜平氏が、読者からの質問に答える連載「“針路”相談室」。今回は、同僚との仕事量に疑問を抱く会社員からの相談です。
* * *
Q:私は同じ部署の他の人と比べて明らかに仕事量が多いです。「仕事だから」と思ってきましたが、スムーズに遂行を重ねるごとに「コイツに頼めばやってくれる」と思われ、どんどん仕事を振られるようになりました。一方で、何かあればすぐに「体調が悪い」などと逃げる同僚は仕事をあまり振られず、楽な日々を過ごしています。仕事を断るのも癪(しゃく)なので、黙って受けてきましたが、仕事が楽そうな同僚を見るにつけ、「結局、組織でやっていくには、こういう奴の方が得なのか」と思ってしまう自分がいます。(神奈川県・46歳・男性・会社員)
A:仕事というのは、できる人のところに集中しちゃうんですよねえ。どこの組織でもそう。
実はこれは、人間だけじゃなくて、アリの世界でも似たようなことが起こってるんです。これを「働きアリの法則」と言うんですが、働きアリ全体のうち、よく働く2割のアリが8割の食料を集めてくるというもの。そしてソコソコ働いているのが全体の6割で、残りの2割はサボっているんです。さらに、よく働いているアリ2割を間引くと、残りの8割の中の2割がよく働くアリになるんです。これってなんだか、人間の世界と似た構図だと思いませんか?
つい働きすぎてしまう、そんなあなたにおすすめしたいのは、ずばりサボること。その強い責任感をちょっとばかし緩めて、「何だか風邪っぽくて……」とか「知り合いに不幸があって……」とか適当なことを言って休んだらいいんです。長く働き続けるには、時に「逃げる」ことだって大事なことです。あなたは恐らく年休もまともに消化していないんでしょう。休んでいい権利はあるのに、責任感から休めないのでは。そういう人の中には、ものすごく根を詰めて、体を壊してしまうような人もいます。鬱々とした感情で仕事に向き合うより、ぱっと休んでリフレッシュして、また新たな気持ちで仕事に臨んだ方がいいですよ。