木嶋の婚活サイトのプロフィールには、介護をしているから世話が得意、料理が得意というようなことが書かれていた。化粧もせず、服装も決して派手ではなく、地味にみえる木嶋に、男性たちは全く警戒することなく身を委ね、簡単に大金を譲った。性的なことはむしろなく、男性の「女性観」をそのまま体現するかのような技で、彼女は一人で東京を生きた。長いつきあいの彼氏もいたが、彼女のほうに結婚の意思はなかった。この男性は共犯者と疑われたのだが、彼女は彼に本名すら伝えていなかった。

 一審判決後、木嶋は自身の言葉で語りはじめた。私は彼女が自分の言葉で語るのをずっと待っていた一人だけれど、彼女の発信するものの多くが、言葉の表面だけを羅列した中身のあまりにないものであることに衝撃を受けた。

 なにも、ない。一切の同情と解釈を許さない妙な緊張感のある文章からは、強い攻撃性と、深い空虚を感じる。それは、怖いほどの、空っぽ。

 男女平等を標榜する日本社会の巨大な矛盾そのもの、その矛盾を生き抜こうとした女性。彼女を巡る物語はまだまだ続くのかもしれない。

週刊朝日  2019年5月24日号

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