日本最大手のレコード会社が制作したフュージョンのコンピレーション
Best Hits 100~Fusion
日本最大手のレコード会社であるユニバーサルミュージックが制作した、フュージョンのコンピレーションである。監修と解説はぼくが依頼された。ここでは本ボックス・セットが形になるまでの裏話も交えながら、作品の魅力を紹介したい。
「ジャズ・スタンダード」「ジャズ・ヴォーカル」等、様々なジャンルの100曲を集めたセット・シリーズの1つ。意外なことにユニバーサルはこのようなシリーズを手がけてこなかった。豊富な音源を所有するだけに、選曲者として腕が鳴ったのは言うまでもない。まず最初に楽曲使用の許諾を受けるため、少し多めに120曲を選び、アメリカ・サイドに申請。ところが許諾されたのは70曲にとどまり、50曲は使用不可と通告された。30曲が足りない。NG分も想定して、さらに50曲を追加。この時点で当初のリリース・スケジュールに間に合わなくなり、発売延期が決定された。以上のプロセスを言葉にするのは簡単だが、実際の選曲作業にはかなりの時間を費やしている。合計170曲を申請した結果、許諾を受けたのは102曲。ぎりぎりセーフであった。
5枚組で企画されたが、収録時間の関係で最終的に7枚組と決まった。それにしても許諾を得るのにここまで難儀するとは、想定外だった。同じアルバムの収録曲なのに、OKとNGの曲がある。同じアーティストでも曲によって可否が生じる。それでもA&M、Decca、GRP、MCA、Mercury、Mo Jazz、Philips、PolyGram、Verve、Verve Forecastと、幅広いレーベルをカヴァーすることができた。
選曲段階でのこだわりは、なるべくヴァラエティに富んだアーティストのチョイス。定番の名曲ばかりでなく、自分が個人的に楽しんできたナンバーを広く紹介したい気持ちも盛り込んだ。
40代初めの若さで他界したジョージ・ハワード(ss)の「エヴリシング・アイ・ミス・アット・ホーム」、ラス・フリーマン(g)が貢献したカール・アンダーソン(vo)の「アイ・ウィル・ビー・ゼア」、ジョージ・ベンソン(g)をフィーチャーしたイヴァン・リンス(vo)の「ジュントス」、ルーサー・ヴァンドロスへのオムニバス追悼作からのポール・ジャクソンJr.「ネヴァー・トゥー・マッチ」がその好例。他レーベル所属のマイケル・フランクスが歌うイエロー・ジャケッツの「ザ・ドリーム」、ボブ・ジェームス&デヴィッド・サンボーン盤で知られる名曲をクルセイダーズがカヴァーした「マプート」、グローヴァー・ワシントンJr.との2サックスが今では貴重なトム・スコットの「リード・マイ・リップス」と、裏技的な人選も実現できたと思う。この内容とヴォリュームでこの価格は、かなりお買い得。ファンとして、またプロのライターとして関わってきたぼくのフュージョン人生の総決算と言っていいボックスである。
【収録曲一覧】
Disc-1
1. 4 On The Floor / Gerald Albright
2. Ai No Corrida / Quincy Jones
3. Always Remember / Brian Culbertson
4. Another Sun / Yutaka
5. Any Way You Wanna / Mindi Abair
6. Back Home / Jeff Golub
7. Bahia Funk / Lee Ritenour
8. Bedrock / Wayne Johnson
9. Breezin’ / George Benson & Al Jarreau
10. Butterfly / Herbie Hancock
11. Call It 95 / Herbir Hancock
12. Columbia / Acoustic Alchemy
13. Condor / Dave Grusin
14. Crosstown Kinds / Lee Ritenour & Larry Carlton
Disc-2
1. Do It Again / Deodato & 14 tracks
Disc-3
1. Hallelujah I Love Her So / David Sanborn & 14 tracks
Disc-4
1. Malibu / George Duke & 12 tracks
Disc-5
1. Pipo’s Song / Spyro Gyra & 14 tracks
Disc-6
1. Slang / Brecker Brothers & 13 tracks
Disc-7
1. That’s Right / George Benson & 13 tracks
2011年編集作品