東京医科大の正門前で女性差別に抗議する人ら (c)朝日新聞社
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2019年 国公立大医学科合格者数トップ30 (週刊朝日2019年4月26日号より)
2019年 国公立大医学科合格者数トップ30 (週刊朝日2019年4月26日号より)

 不正が相次いで発覚した医学部入試。今年は女性や多浪性に対する差別は本当になくなったのか。

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 教育情報会社「大学通信」の安田賢治常務はこう訴える。

「“不適切入試”を認めていない一部の私立大でも、合格者に占める女子校出身者の割合が上昇しました。今年の結果を見ると、前年までは女子を制限していたと疑われても仕方がありません。今年は全体的に女子や多浪生の合格が増えているようですが、この傾向が本当に続くのかどうか、毎年チェックしていくべきです」

 医学界では、「女性は医師になっても結婚や出産で辞めてしまう」といった意識が根強い。医学部入試は一般的な入試とは異なり、「就職採用試験」の側面があるため、本音では男性を多く“採用”したいというところもあった。

 試験では面接や小論文などもあり、その比重は高まっている。学力検査の点数だけで合否を決めず、適性も含め総合的に判断しようとしているためだ。

 その方向性は正しいのだろうが、面接や小論文などは客観的な点数はつけにくい。女性や多浪生を、不透明な形で低く評価することもできてしまう。面接担当者の医師らの意識が変わらないと、差別が続く恐れがある。

 文科省の有識者会議が4月5日に公表した「大学入学者選抜の公正確保等に向けた方策について」でも、面接などの評価・判定の標準化は困難だと認める。文科省は毎年のように、公正確保を大学側に求めてきたが、不正入試は防げなかった。

「今年は公正な入試だったとしても、しばらく経てば元通りになる恐れもあります。医学の現場自体が、女性が働きやすいように変わらないといけません」(安田さん)

(本誌・大学入試取材班)

週刊朝日  2019年4月26日号