「忖度」辞任した塚田一郎前国土交通副大臣(C)朝日新聞社
「忖度」辞任した塚田一郎前国土交通副大臣(C)朝日新聞社
塚田辞任は都合がよかった?麻生副総理(C)朝日新聞社
塚田辞任は都合がよかった?麻生副総理(C)朝日新聞社

 自民党の塚田一郎前国土交通副大臣の「安倍首相と麻生副総理への忖度」発言による“更迭”劇は、統一地方選の前半戦にも影響を与えた。

 自民が分裂した福岡県知事選は7日に投票が行われ、現職の小川洋氏が、新顔で麻生太郎副総理が支援する自民推薦の武内和久氏との対決を制して、3選を確実にした。

 小川氏は過去2回の知事選で自民の支援を受けたが、麻生氏との関係が悪化。今回は自民の推薦を得られなかった。ただ、麻生氏の強引な武内氏擁立に対し、反発も噴き出し、県内の自民衆院議員11人のうち二階派などの6人が小川氏を支持する分裂選挙となっていた。
 
この一連の騒動をどう分析したか。政治ジャーナリストの角谷浩一氏に聞いた。

「選挙中にあのような発言をされたら、当落のボーダーラインにいる自民党候補はたまったもんじゃないでしょう。『官邸の思惑でいろんなものが左右されるのか』『相変わらずまだそんなことをやっているのか』と、痛くもない腹を探られるはめになった」

 塚田氏の問題の発言は、4月1日に北九州市で開かれた、自民党が推薦する福岡県知事選の候補者の集会で飛び出した。北九州市と山口県下関市を結ぶ道路の事業化について、自民党の吉田博美参院幹事長から「首相と副総理の地元事業なんだよ」と言われたと紹介し、「私は忖度します。国直轄調査に引き上げた」などと発言。「利益誘導だ」と与野党からの批判を受け、辞任に追い込まれた。

 角谷氏は「(問題の発言は)現政権下での神経の緩み」が招いたと指摘する。

「公文書改ざんや事務次官セクハラ問題など、これまでも辞任や更迭が必至というような失策は数多くあった。にも関わらず、逃げ切っている軽い大臣がたくさんいるんだから、副大臣の発言が問題になるとはおそらく思っていなかった。安倍政権の高い支持率を背景に調子に乗り、おごりもあったのではないでしょうか」

 塚田氏の発言は、福岡県知事選に向けたアピールの場でのもの。塚田氏は元々麻生氏の秘書。知事選は麻生氏が支援する武内和久氏の劣勢が伝えられていた。

「麻生さんの地元で、自分はこれだけ頑張っている、自分の判断の背後には首相や副総理がいる、と強調することで中央への影響力が強いことをアピールしたかったのでしょうが、結果的に正直すぎてやぶへびになりました」

 武内氏に対抗する現職の小川洋氏支持を自民党議員たちが相次いで表明する中での塚田氏の辞任は、麻生氏にとって「好都合」という見方もできると、角谷氏はこう続ける。

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秦正理

秦正理

ニュース週刊誌「AERA」記者。増刊「甲子園」の編集を週刊朝日時代から長年担当中。高校野球、バスケットボール、五輪など、スポーツを中心に増刊の編集にも携わっています。

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敗北しても麻生氏は責任逃れできる