2019年の早慶の学部ごとで、志願倍率が最も高い学部は、早大が30.3倍の商学部、慶大が22.5倍の医学部。一方、最も低いのは、早大は11.9倍の創造理工学部、慶大は7.6倍の法学部だ。
志願者数を前年と比べると、早大は5871人、慶大は1426人減った。その理由を、駿台教育研究所進学情報事業部長の石原賢一さんは「入学定員管理の厳格化で厳しい入試になり、『不合格』を嫌う受験生が無理して早慶にチャレンジしなくなった」と話す。早慶の場合、入学定員管理の厳格化で、私学助成金が不交付となる入学定員充足率(入学定員に対する入学者数の割合)が15年の1.2倍以上から年々引き下げられ、18年以降は1.1倍以上。この結果、早大の18年の合格者数を16年と比べると、2年間で3444人も減少した。
18年の文系は社会学部系が人気だったが、19年は法学部や国際系の学部が人気になったため、早大では社会科学部が2041人減、教育学部が2698人減、文化構想学部が921人減と、大きく志願者を減らした。早大で志願者が増えたのは、583人増の法学部と245人増の国際教養学部だけだ。
一方、慶大で志願者が増えたのは203人増の環境情報学部と3人増の医学部だけで、理工学部の志願者は407人減った。
「環境情報学部は文系と融合した理系で、先端領域の研究をします。志願者が増えたのは、『情報』という名称の影響も大きいと思います」(石原さん)
早慶は企業からの人気も根強い。
「早大はメーカーに強く、慶大は金融や商社に強いです」(大学通信ゼネラルマネージャー安田賢治さん)
前出の石原さんは、慶大が企業に強い理由のひとつに、卒業生組織「三田会」の存在を挙げる。
「『三人寄れば三田会』と言われ、小さな組織もあります。親身になって学生の相談に乗り、就職活動も支援しています。一方、早大は独立独歩の一匹おおかみのイメージもあります」
早大の卒業生数は慶大の約1.5倍と多いが、16年の東京商工リサーチ調べによると、1部上場企業の社長数の1位は慶大の180人、2位が東大(152人)で、早大は3位(123人)に甘んじる。
私大の両雄は、社会でも活躍する人材を育成してほしい。(庄村敦子)
※週刊朝日 2019年3月29日号