ただ、シニア層がやりたい仕事と企業側が求める仕事は、依然としてミスマッチがある。会社勤めだった元管理職の人は事務職をやはり好むようだが、今の人手不足下でも事務職は買い手市場で競争率が高い。求人が多いのは未経験の仕事ばかりで自分には無理とあきらめる人は多いという。
「年齢を重ねるほど、新しいチャレンジにちゅうちょしてしまうのは仕方ありません。ただ、まったくの未経験かというと、そんなことはないんです。たとえば管理職として多くの部下を率いてきた人なら、コンビニの店長やマネジャーとしてそのスキルを生かせるはず」(同)
職種でひとくくりにするのではなく、何かを売った、交渉した、組織をまとめたなど、自分の経験を細分化すればよい。すると、未経験と思う仕事にも自分の生かせるスキルがあることに気づく、と宇佐川さんは呼びかける。
シニア層の求人が多いのは、飲食・介護・物流など。職種にこだわるより、勤務地や、働く曜日・時間帯などの希望に合う仕事から選ぶ人が多い。そのほうが満足度が高い場合もあるのだとか。さらに、積極的にシニア層へ呼びかけている職場や、高齢の働き手がすでにいる職場がよりおすすめだという。シニアの良い面も注意点もわかっている職場のことが多いためだ。
新しい仕事を探す際は、失業保険もうまく使いたい。
60代でもフルタイムで働いていれば、雇用保険に加入しており、失業保険の対象になる。65歳で退職して新しい仕事を探す場合、退職日を数日前倒しするだけで、もらえるお金を大きく増やせる「裏ワザ」があるという。前出の小野さんはこう解説する。
「職探し期間中に受けられる失業保険は、65歳を境に、給付の手厚い基本手当から給付の少ない高年齢求職者給付金に変わります。それまで1年以上勤務してきた人の場合、基本手当なら90~150日分の給付に対し、高年齢求職者給付金では50日分と大きな差が出ます」
法律では、誕生日の前日にその年齢に達する規定。65歳の誕生日の前々日までに退職すれば、基本手当の対象となってより金額の多い失業保険を受けられる。64歳までは基本手当と年金を同時に受給できずどちらかを選ぶ必要があるが、65歳からは併給できてお得度が高い。
「ただし退職金を受け取れるような場合は、規定の日まで勤めないと減額されたり不利になったりすることもあります。事前に確認してから判断しましょう」(小野さん)
(ライター・森田悦子)
※週刊朝日 2019年3月29日号