『ゴー・アヘッド・ジョン / ザ・ミュージック・オブ・ジョン・マクラフリン』ポール・スタンプ著
『ゴー・アヘッド・ジョン / ザ・ミュージック・オブ・ジョン・マクラフリン』ポール・スタンプ著
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 「マイルス・デイヴィスは、ジョン・マクラフリンを使って非難されたものだ…そこでマイルスは言った。『おい、俺はかまわないぜ。やつらブラザーの中にジョン・マクラフリンのように弾けるやつがいたら、そいつを雇うだろうよ』と」(ジョー・ザヴィヌル)

 ジョン・マクラフリンは、30年に及ぶ千変万化の長い活動歴を通して、現代におけるジャズ・ギタリストの第一人者に名を連ねている。

 彼は1960年代初期にイギリスのヨークシャーからロンドンに進出し、中期にはブリティッシュ・ブルース・ブームの立役者の一人になった。だが、当時は注目される存在ではなかった。

 マクラフリンが実際に脚光を浴びるのは、マイルス・デイヴィスに起用され、『イン・ア・サイレント・ウェイ』『ビッチェズ・ブリュー』『ジャック・ジョンソン』といった不朽のアルバムに登場した時期である。

 1970年代初期、マクラフリンは、ジャズとロックの融合を図るグループ、マハヴィシュヌ・オーケストラを結成し、激しくも美しい音楽を創造した。

 彼はその後、新たに自己のグループ、シャクティを結成し、ジャズとインド音楽のフュージョンを実践する。そして、カルロス・サンタナ、パコ・デ・ルシア、ラリー・コリエル、アル・ディミオラ、トリロク・グロウといったさまざまなミュージシャンとコラボレーションを重ねた。

 マクラフリンは現在、世界各地でコンサートを行ない、その眩いばかりのギター・テクニックと独創性によって、ホールに詰めかけた聴衆を魅了し続けている。

 本書『ゴー・アヘッド・ジョン』は、ドラッグという燃料で勢いづいた60年代から、ジャズ・ロックとエスニック・フュージョンによる目くるめく70年代へ、さらにはマクラフリンがジャズ・ギターの巨匠として復権した90年代にいたるまで、時代を反映する多様な音楽的変遷を辿る。

 著者ポール・スタンプは、直観力のある独自の見解とジャズ及びロックに関する幅広い知識をまじえて、マクラフリンが魅惑的で異彩を放つモダン・ジャズの巨人として成功を収めた経緯を的確に捉えている。
(訳:中山啓子)

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