さらに、中野医師によると、白内障の治療が有効な場合もある。

「閉塞隅角であり、白内障の治療対象でもあるなら、レーザー治療の代わりに白内障の手術を受けるのもよいでしょう」

■水晶体摘出の治療は診療指針にも明記

 白内障の手術では、白く濁った水晶体を摘出し、代わりに人工の眼内レンズを入れる。水晶体は厚さが5ミリほどあり、この厚みで虹彩が押され、隅角が塞がりやすくなる。これに対して、人工の眼内レンズの厚さは1ミリ前後。薄くなった分、虹彩を押す力が弱まり、隅角が開きやすくなる。

 この「水晶体摘出」は以前から実施されていたが、閉塞隅角症や閉塞隅角緑内障に対する治療法の一つとして、2017年5月に改訂された「緑内障診療ガイドライン」に明記された。同ガイドライン作成委員会のメンバーでもある富田医師は次のように指摘する。

「レーザー治療で隅角が開く効果は一時的とされているのに対して、水晶体摘出は根本的に閉塞隅角を治療できる可能性があることがわかってきました。さらに、日本人と体質が似ているアジア各国で頻繁におこなわれ、科学的な根拠が確かになってきたからです」

 高齢化に伴い、白内障の手術を受ける高齢者は増加傾向にある。

「この手術を受ければ、閉塞隅角緑内障を発症することはほぼなくなります。かつては、高齢の女性を中心に、急性発作で緊急搬送される患者さんが珍しくありませんでした。しかし、近年、そのようなケースが少なくなったのは、白内障手術の普及が影響していると思われます」(富田医師)

 レーザー治療や水晶体摘出で隅角が開くかどうかは、隅角に圧力をかける検査でわかる。単純な閉塞なら、この検査で隅角が開くことがある。一方で、圧力を加えてもまったく開かない場合は、水晶体摘出などの効果が期待できず、眼圧を下げるためにさらなる手術を検討することになる。

「水晶体摘出などで隅角が開いても、まだ眼圧が高いケースは残存緑内障とされ、隅角は開いているので薬物療法を追加することがあります。それでも眼圧が下がらなかったり、水晶体摘出などでも隅角が十分に開かなかったりする場合もやはり、手術を検討することになります」(同)

◯東邦大学医療センター大橋病院眼科教授
富田剛司医師

◯東京慈恵会医科大学病院眼科主任教授
中野 匡医師

(文/近藤昭彦)

※週刊朝日3月1日号から

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