■変形性股関節症/人工股関節の手術支援ロボット

 日本初の整形外科分野の手術支援ロボットとして、17年に薬事承認されたのが「Mako(メイコー)」だ。変形性股関節症などに対しておこなう人工股関節置換術で用いられる。

 人工股関節置換術は、骨盤側の骨を球形に削り、金属製のカップを入れる。一方の大腿(だいたい)骨(太ももの骨)側に入れた金属とつなげて、人工股関節として置換する。削る位置が不正確だと、脱臼や固定不良、人工関節の摩耗、破損のリスクが高まる。外科医の感覚を頼りに骨を削る通常の手術では、精度にばらつきが生じ、脱臼しないように患者に「正座しないように」などの動作制限を設けるのが一般的だ。

 ロボット手術は、現在でも一部の病院で導入されているナビゲーションを用いた手術を、ロボットが補助して計画どおりに実施するものだ。ナビゲーションは、術前に取り込んだCT画像などから治療計画を立てる。術中にモニターに映し出される角度や深さを数値的に確認しながら進めることができる。患者の体勢の変化にもリアルタイムで対応する。

 Makoは、この治療計画に基づき、正確で安全な手術を可能にする。術者はアームを持ち、先端のドリルの位置をナビの指示に合わせて骨を削るが、正しい位置にこなければ削れない機能がついている。大阪大学大学院の菅野伸彦医師はこう話す。

「治療計画から外れた角度や深さで骨を削ろうとすると、自動でロックがかかるため、ズレたり突き抜けたりする恐れがないのが特徴です。車でいう衝突防止装置が付いているようなものです。また、通常の手術は小さいサイズから始めて何回もドリルを当て球形に削っていきますが、Makoは、位置がぴたりと決まるため、最初から目標のサイズで削ることができ、その作業も1回で済みます」

 正確な位置に人工股関節を設置できれば、患者に動作制限をしなくてもよくなる。通常の手術では医師の経験により精度にばらつきがでるが、Makoを使えば経験が少ない医師でも同じ正確さで手術できる。

「ただし、ナビどおりに実行するロボットですから、治療計画を適切に立てられることが前提です」(菅野医師)

 今後、ロボット技術の保険加算が追加されれば、導入が進むと期待される。

◯東京大学病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科教授
山岨達也医師

◯大阪大学大学院運動器医工学治療学教授
菅野伸彦医師

(文/出村真理子、杉村健)

※週刊朝日ムック「手術数でわかるいい病院2019」から

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