冒頭に、彼女がブレークするきっかけとなったシングルが2曲続く。

 1曲目は、リズミカルでポップな「満月の夜なら」。“溶かして 燃やして 潤してあげたい”と、性的な衝動を抑えきれずに女の子に迫るラヴ・ソング。男の子の気持ちの高ぶりや挑発的な行為、官能的な表現をちりばめた曲だ。

 続いて、紅白歌合戦で歌った「マリーゴールド」。“麦わら帽子の君が 揺れたマリーゴールドに似てる”“いつまでも 離さない”といったロマンチックな歌詞だ。J―POPの王道的なサウンドと恋を追憶する冷静な歌いぶりが切なさを醸し出す。普遍的な説得力があり、幅広いファンの獲得につながった。

「ら、のはなし」は、これまた脳裏に“?”が灯るタイトルだが、“ら”は、“たら・れば”の略で、仮定を意味する。理想の恋を思い描く妄想と、報われることのない現実を描いた歌だ。諦めのためいきが漏れ聞こえてくるようだ。

「二人だけの国」は映画『失楽園』をモチーフにして書いたという。“ナンマイダ”と繰り返される読経から一転、ドラマチックな展開へと変化する曲構成だ。“赤く染まって抱きしめあうの”“刺さったまま溶けあいたいわ”と続く歌詞は、毒入りワインで心中をはかり、性行為の最中に死を迎えるという映画の内容をもとにしている。ラストの“決定的瞬間の愛”“人生最大級の愛”という言葉から、映画を見たときの衝撃の大きさがうかがえる。

ひかりもの」は、あいみょんをいたく傷つけた出来事をきっかけにできた。“感情を爆発させて”書いたという。防波堤を飛び越えて襲ってきた波に魂までさらわれたという歌詞で、“忘れないぞ あの日の悔しさを”“つまらない事ではもう 泣かないぞ”という決意を歌う。“ひかりもの”とは、脚光を浴びた彼女自身を評した言葉だという。

「恋をしたから」は、ギターの弾き語りにクラリネットやエレキを重ねたシンプルな構成。“当たり前なんてものはなくて いつか失うこともあるわけで”と、恋愛がもたらす情景をつぶやくように切々と歌う。

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