返還交渉への期待を語る鈴木宗男氏=撮影・多田敏男
返還交渉への期待を語る鈴木宗男氏=撮影・多田敏男
ロシアのプーチン大統領と握手する安倍晋三首相=1月22日、モスクワ(c)朝日新聞社
ロシアのプーチン大統領と握手する安倍晋三首相=1月22日、モスクワ(c)朝日新聞社
3月7日に朝日新聞出版から発売される『増補・日ソ国交回復秘録 北方領土交渉の真実』
3月7日に朝日新聞出版から発売される『増補・日ソ国交回復秘録 北方領土交渉の真実』

 北海道の地域政党である新党大地の代表で、元衆院議員の鈴木宗男氏(71)。内閣官房副長官や元衆院外務委員長などを歴任し、北方領土の交渉に関わる。

 受託収賄罪などの実刑判決が確定し、2010年に衆院議員を失職してからも、ロシアとのパイプ役となってきた。長女の貴子氏は自民党所属の衆院議員で、宗男氏は安倍晋三首相と昨年10回以上面談。今年も2月12日に会ったばかりだ。交渉を巡る“キーマン”が単独インタビューでこう断言した。

「プーチン大統領が決断し2島は戻ってくる」

 ロシア側は、第2次大戦の正当な結果として北方領土がロシア領になったことを認めるよう日本側に迫るなど、強気の姿勢だ。交渉は難航しているとの見方が広がるなか、前向きに捉える鈴木氏に見解を聞いた。

*  *  *

――「北方領土の日」の2月7日、返還要求全国大会が採択したアピール文から、例年使われてきた「北方四島が不法に占拠されている」との文言が削除されました。

「現実的な対応が浸透してきていると感じます。私は現在においても『4島一括返還』を言い続けている人たちの歴史認識に問題があると思っています。確かに旧ソ連時代にはそう主張し、4島一括返還の上に『即時』までつけていました。ですが、ロシアとの領土問題交渉の基礎となるのは、1956年の日ソ共同宣言(以後56年宣言)です。平和条約締結後に、歯舞群島と色丹島の2島を日本側に引き渡すというものです」

「ところが、その4年後の60年、日米安保条約が改定されるとソ連は反発します。すかさず、対日覚書(いわゆるグロムイコ覚書)で、『外国軍が駐留する国には領土問題は存在しない』と言ってきます。当時のグロムイコ外相が歯舞、色丹の引き渡し条件として、米軍の日本撤退を要求したのです。それで日本側も態度を硬化させて、強く出た。4島一括返還は、60年以降の“造語”なのです」

――安倍首相は1月22日、モスクワでプーチン大統領と25回目の首脳会談を行いましたが、交渉が進展しているように見えません。

次のページ
メディアは勉強不足