“風葬”をテーマにした新作映画「洗骨」で主演を務めた奥田瑛二さん。普段は男の色気が漂うかっこいいイメージがある奥田さんですが、本作では酒びたりでひきこもりのお父さんという別人ともいえる役柄。作家の林真理子さんが映画や役作りについて伺いました。
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林:サクラちゃん(奥田さんの次女で俳優の安藤サクラ)のNHKの朝ドラ「まんぷく」、みんな楽しみに見てますね。サクラちゃんが主役に決まったとき、「お父さん、素行に気をつけてくださいね」って言われたんですって?
奥田:そう。「横断歩道は青になってからゆっくりと歩いて渡ってね」とか、「女性がいるお店には絶対に行かないでね」とか言われた(笑)。
林:まあ、それは大変。品行方正でいなきゃいけないわけですね。
奥田:でも3月末で放送が終わるからね、なんちゃって(笑)。
林:(笑)。今、60代で現役感バリバリの俳優さんって奥田さん以外にあまりいないですよね。今度奥田さんが主演なさった「洗骨」(2月9日全国公開)を見ましたが、いい映画でしたよ。正直なところ、本名では初監督のゴリさん(お笑いコンビ「ガレッジセール」の照屋年之)に胸を貸してやったという感じですか。
奥田:ゴリさんに「なぜ僕なのか聞きたい」と言って渋谷の喫茶店で会ったら、「その目です。目の奥にある悲しさです」と殺し文句を言われたんです。それで「こいつ、なかなかできるぞ。よし、付き合ってみるか」と思ってね。ホン(台本)もおもしろかったし、ショートフィルムで日本のグランプリ(ショートショートフィルムフェスティバル&アジア2017)もとってるし。
林:ゴリ監督が? そうなんですか。
奥田:クランクインして初日が終わったときに、「わかった。こいつならカメラの前にすべてをさらけ出してやろう」と決めたの。今の若い監督って、自信がないから、映画の方程式じゃないものをやたら撮るわけ。だけどゴリ監督は方程式がちゃんとできていて、撮りたいものをパッパッと撮っていくから、すごくリズムがいいの。あとは沖縄の離島の青い空の下に自分の肉体を置いて、沖縄人になっていればいいという感覚でいましたね。