なお、低侵襲という言葉は、皮膚の傷の小ささや早く離床できることだけを示すものではない。

「真の低侵襲とは、骨や筋肉へのダメージ具合、出血量、手術時間、X線の被ばく量など、からだ全体への負担を軽減することを目的とするべきです」(三原医師)

■不安定性のある腰に実施される

 では、固定術に適しているのはどのような状態なのだろうか。

 三原医師は「腰に不安定性のある場合は除圧に加えて固定術をおこなっています」と話す。腰が正常の動き以上にぐらついている場合や、神経の圧迫を取り除く除圧操作によって腰が不安定になると予想されるケースで実施されている。腰痛や下肢のしびれなどの症状は、一般的に固定術のほうが改善は長持ちする。

 ただし除圧術と同様に、固定術にも一長一短がある。

「腰の骨は五つあって、その五つで腰のあらゆる動きをつくっています。固定術はその腰の骨の一部を金属で留め、そこが動かなくなります。動かない部分には神経の症状が出ないので利点もありますが、本来は動かないといけないところです。残った骨で腰の動きをつくらないといけないため、患部の上下の骨に負担がかかります。10、20年先に弊害が出て大きな再手術をする可能性があることに留意しましょう」(山田医師)

 山田医師によれば、除圧術だけで改善しない人は全体の1~2割いるという。

 また、固定術は、骨がしっかりとつくまで、コルセットを3カ月~1年装着しないといけない。事務仕事や軽作業はできるが、術後半年ほどは肉体労働やスポーツをすることができないので、仕事や生活スタイルに合わせて術式を選ぶ人もいる。

「医師が病状や治療方針をきちんと説明し患者さんの同意を得る『インフォームド・コンセント』よりも、医師が十分な説明をしたうえで手術を受けるかどうかは患者さんに選択してもらう『インフォームド・チョイス』がいいのではないでしょうか。まずは負担の少ない方法を試し、それでも改善しなければ次の手、つまり再手術としての固定術を検討してもいいと思います」(同)

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専門医がいる病院の重要性