テレビの仕事も楽しかった。ドラマもバラエティーもね。そりゃ、やり方の違いに戸惑うこともあったけどな。俳優は、与えられた場で見る人を楽しませるのが仕事だ。

 日活が、というより日本映画が元気がなくなって、テレビが「娯楽の王様」になったけど、テレビでドラマを見ても、みんなうまくないなあって思っちゃう。俺が今、いちばんの“名優”だと思っているのは、「ミヤネ屋」の司会者の宮根誠司だね。あいつの番組は、見ていて楽しいし、コマーシャルもたくさん入ってる。ヤツは客が呼べる俳優だね。

――現在85歳。65年の俳優人生を振り返って、やり残したことを聞いた。

 今の映画の世界や後輩の俳優たちに、そりゃあ、思うところはたくさんある。今は映画を作るのが難しい時代だ、なんて言ってても仕方ない。これまでだって楽に作れた時代なんてないんだ。日活のいいときも悪いときも見てきた俺は、そう思うね。

 もう今は、ほっぺたには何も入ってない。2001年に、テレビカメラに見守られながら除去手術をやった。21世紀になったことだし、普通の顔の老人として生きてみたくなったんだ。ほっぺたがふくらんだ顔に、ちょっと飽きたってのもあるしな。

 人生を振り返って満足かどうかなんて、まだ死んだわけじゃないから、それはわからないな。けど、夢があるんだ。それは、90歳で殺し屋の役をやること。俺は、殺し屋を演じることにずっとこだわってきた。最後に出る作品で、殺し屋をやりたい。

 殺す相手は自分じゃないかって。ハハハ、それもシャレがきいてていいかもな。

(聞き手/石原壮一郎)

週刊朝日  2019年2月8日号