ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。ソーシャルメディアが「有害なツール」になってしまった理由を説明する。
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近年、フェイスブックやツイッターを始めとするソーシャルメディアが世界中から非難を浴びている。2016年のブレグジットをめぐる英国民投票や米大統領選挙で、デマやフェイクニュースの蔓延(まんえん)、他国からの政治的干渉、国民世論の分断を招いたことが原因だ。
かつてソーシャルメディアは、独裁主義や専制主義といった権威主義に対抗し、民主化を促す「希望のツール」としてもてはやされた。しかしいまや、民主主義をむしばむ「有害なツール」という汚名を着せられている。なぜこれほどまでにソーシャルメディアは変容してしまったのか。
その理由について、カナダ・トロント大学のロナルド・デイバート教授は、1月に発表した論文「ソーシャルメディアをめぐる三つのつらい真実」で詳述している。タイトルどおり、現在ソーシャルメディアが抱える三つのつらい真実、つまり問題点を指摘したものだ。
第一の真実は、ソーシャルメディア企業のビジネスモデルが、ユーザーの監視に基づく「個人データ監視経済」の上に構築されていることである。可能な限り多くのユーザーについて、その習慣や他者との関係、趣味、心拍数、睡眠パターンに至るまで、ありとあらゆるデータを収集している。それをもとに、高精度のターゲティング広告を販売して利益を上げている。その精度をさらに高めるために、際限のないデータ収集競争が激化しているのだ。
第二の真実は、好むと好まざるとにかかわらず、ユーザー自身がソーシャルメディアから抜け出せないという現実だ。フェイスブックのように支配的なシェアを持つがゆえに、それなしには社会的な生活を営めないという事情がある。それに加え、ソーシャルメディア自身が心理学的なテクニックを駆使して、サービスに中毒性、依存性を持たせていることもある。