私にとって安倍さんのイメージは長らく「反フェミ」な人だった。“行き過ぎた男女平等”とフェミニズム批判を強烈に繰り広げた2000年代のバックラッシュの先頭に安倍さんはいた。
“行き過ぎた”と主張することで、“ちょうどいい男女平等”があるような錯覚を促し、“行き過ぎた”先には、まるで恐ろしい社会が待っているかのように危機を煽るような反フェミキャンペーンだった。
日本のフェミニズムは00年代のバックラッシュに相当の打撃を受けた。私ですら、講演に呼ばれれば、館長に発言内容を厳しくチェックされたり、殺害予告などというのも普通にあった。フェミニズムバッシングは、言論封殺という形でやってくることを、00年代に身に染みて味わった。
危機感を煽り緊張を強いる。それは自由に発言できない空気を作ることだ。私は自由だ。私は私の権利を求める。私は私の語りをやめない。私は私の見ているものを信じる。そういうことが言えなくなるのが、「戦争」状態なのだと思う。今の日本が、やっぱりそういう方向に行こうとしているのだと思う。冷静になれ。
※週刊朝日 2019年1月25日号