●グラント・グリーンと本書について
本書は、ジャズ・ギタリストの天才、故グラント・グリーンの音楽と人生を描いた真情あふれる伝記である。グラント・グリーンは、60年代初期から70年代後期まで、ブルーノート・レコードを中心に、およそ100枚のアルバムのレコーディングを行ない、名声を得ようとした矢先に、この世を去った。
グリーンの音楽は、現在、おびただしい数のアシッド・ジャズやヒップ・ホップに刺激と影響を与え、レコーディングにおいてサンプリングされている。グラント・グリーンは、伝説として、その存在感をさらに増しつつある。
グリーンは、メインストリームに属する正統派のジャズ・ギタリストでありながら、ソウルフルなファンクへとスタイルを一変させた。彼はその間、ブルーノート・レーベルにリーダー作を含む数多くのアルバムを残し、独特のリズミックでドライヴィングなサウンドを聴かせた。
本書『グラント・グリーン:リディスカヴァリング・ザ・フォーゴトン・ジニアス・オブ・ジャズ・ギター』は、彼の家族、友人、仲間のミュージシャンの視点を通して、グリーンの人物像と知られざる苦闘をあきらかにする。
「アルフレッド(・ライオン。ブルーノートのプロデューサー)が闘病していたとき、私はグラントの『アム・アイ・ブルー』を聴きはじめた。一日中、そのレコードを聴いていた。きっと、子供たちをうんざりさせていたと思う。アルフレッドが亡くなる3年ほど前のことだった。彼の病気は深刻なもので、私は『これを思う存分聴いたほうがいいわ。いま聴かなければ、アルフレッドがいなくなったとき、辛くて聴けなくなる』と思った。だから、レコードをかけつづけた」(ルース・ライオン。アルフレッド・ライオンの未亡人。本文より)
●書評の紹介
グラント・グリーンの人間としての魅力とジャズの魔力を捉えた一読に値する書物である。(シカゴ・トリビューン)
著者の新しい発見に挑むという情熱と、過少評価を受けたブルーノートの珠玉のギタリストを再評価させるという決意が伝わる一冊だ。(ジャズイズ)
興味深い証言によって構成されるこの伝記は、グラント・グリーンの生涯とともに戦後のジャズ・シーンを映し出している。(ライブラリー・ジャーナル)