30年におよぶ平成の芸能史には、いくつもの記憶に残る発言がある。アイドル評論家でサブカルチャーにも詳しい作家の中森明夫さんが最も印象的だというのが、前田敦子のスピーチ。AKB48のメンバーだった前田は、2011年の「選抜総選挙」で1位に返り咲いた際に涙ながらにこう訴えた。
【写真】不機嫌な一言が命取りになってしまった人気女優といえば…
「私のことは嫌いでも、AKBのことは嫌いにならないでください」
大島優子とセンターを争い、アンチファンもいる中での言葉だ。
「AKB48グループは、平成のアイドルグループの中で最大のものでした。そのトップに立った彼女が発した言葉の意味合いは大きい」(中森さん)
昭和ではキャンディーズが「普通の女の子に戻りたい」と宣言し解散した。
「そのあとに山口百恵さんが、『幸せになります』と結婚し引退した。いずれもトップアイドルでしたが、一人の女の子である自分の気持ちを選んだ。そこが昭和的な感覚なんですが、前田さんは自分じゃなくてチームやグループのほうを大事にした。自分は嫌われてもいいから所属するチームを愛してほしい。自分よりも周りを気にする平成的メンタリティーが表れている名言です」(同)
平成は芸能人の“不倫”も話題に上った。その象徴とも言えるのが、石田純一の「不倫は文化」だ。中森さんは言う。
「この言葉は、石田さんが発したものとは違う文脈で広がり、大きなバッシングをうけた。不倫が発覚するたびに何度も注目され、渡辺淳一さんの『失楽園』の大ブームも相まって、『不倫は文化』という言葉は完全に定着しました。石田さんは当時相当なプレッシャーだったと思います。いまは再婚されて子供も生まれ、コミカルな部分もある大人のタレントさんになりました」
不倫に対する風当たりは、どんどん強くなっている。
「週刊誌やワイドショーに加え、インターネットやSNSの登場が大きい。『ゲス不倫』という言葉も生まれました」
その「ゲス不倫」の言葉のもとは、バンド「ゲスの極み乙女。」の川谷絵音とタレントのベッキーの不倫。2人のLINEのやり取りが流出し、ベッキーが送信した週刊文春を指す「センテンス スプリング!」という言葉は、それまで好感度が高かったこともあって、衝撃的だった。