時空を超えて愛される時代小説。2019年にはどんな作品が現れるのか… (※写真はイメージ)
時空を超えて愛される時代小説。2019年にはどんな作品が現れるのか… (※写真はイメージ)
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2018年ベスト10 (週刊朝日 2019年1月4-11日合併号より)
2018年ベスト10 (週刊朝日 2019年1月4-11日合併号より)

 10回目となる歴史・時代小説ベスト10は、例年同様、文芸評論家や書評家、新聞・雑誌の書評担当者、編集者、書店員ら“本読みのプロ”の方々を対象にアンケートを送る形式で実施した。2017年11月から18年10月までに刊行された歴史・時代小説の中から、それぞれ3作を推薦してもらい、順位をつけた。

【図表で見る】2018年ベスト10はこちら

【2018年ベスト10】(※価格は税抜)
1位『星夜航行』上・下 飯嶋和一(新潮社)各2000円
2位『童の神』今村翔吾(角川春樹事務所)1600円
3位『信長の原理』垣根涼介(KADOKAWA)1800円
4位『雲上雲下』朝井まかて(徳間書店)1700円
5位『火定』澤田瞳子(PHP研究所)1800円
6位『無暁の鈴』西條奈加(光文社)1500円
6位『悪玉伝』朝井まかて(KADOKAWA)1600円
8位『影ぞ恋しき』葉室 麟(文藝春秋)1950円
9位『北条早雲 疾風怒濤篇』富樫倫太郎(中央公論新社)1500円
10位『国宝』上・下 吉田修一(朝日新聞出版)各1500円
(注・6位は同率で2作あります)

 1位の飯嶋は3年ぶりにトップに輝いた。2位の今村は初のランクイン。3位の垣根は16年以来。2作が入った朝井は6年連続。5位の澤田と同率6位の西條はともに15年以来。葉室は4年連続。富樫は14年以来。吉田は初めてベスト10に入った。今回は前回にも増して豊作で、『童の神』や『火定』など奈良・平安時代に力作が揃った。朝井は『雲上雲下』で第13回中央公論文芸賞、『悪玉伝』で第22回司馬遼太郎賞を受賞するなど歴史・時代小説界を牽引した。

 選ばれた10冊について、審査員を務めた文芸評論家、書評家、編集者、書店員ら“本読みのプロ”に選んだ理由を聞いた。

■1位『星夜航行』上・下/飯嶋和一 
【歴史の悲惨と貫かれる信念】

 逆臣の遺児として徳川家を追われた沢瀬甚五郎。甚五郎は堺、薩摩、博多と転々とする。時代は天正から文禄、慶長へ。信長が死に、秀吉が朝鮮出兵を行う大きな時代のうねりに甚五郎も巻き込まれていく──。

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