中国での大豆粕の品不足は、日本にも深刻な影響を与える。今年10月までの中国からの輸入量は、5月以降急増し、昨年同期を7%程度上回る勢い。中国での不足を見込んで、駆け込み需要が高まったためだ。

 日本では飼料作物の生産は少なく、豚のエサは輸入に頼っている。値段が上がっても、確保しなければならない。大豆粕の輸入単価は、6、7月に前年同期の約2割増しとなった。足元ではやや落ち着いているものの、10月までの平均単価は1キロ44.6円から51円へ1.14倍も上昇した。

 日本の養豚の生産コストは、7割近くをエサ代が占める。円安傾向のため、輸入に頼る飼料価格はもともと上昇していた。

 そこに中国の大豆ショックが加わった。飼料代の値上がりは生産コストの上昇に直結する。日本の養豚農家は海外よりも規模が小さく、経営体力も弱い。品不足が長引けば、利益はなくなってしまう。

 日本の養豚農家は、中国と同じように厳しい状況に置かれている。農家数は1960年代には約80万戸もあったが、2018年には4470戸まで減った。米国やカナダ、デンマークなどからの輸入が増え、国内自給率は半分ほど。今回の大豆ショックで、廃業する養豚農家がさらに増えてもおかしくない。中国の大ブーメランは日本にも飛んでくるのだ。

 こうした問題はほかの農産物にも広がる。本誌3月2日号(「中国農業が衰退!!  日本の食卓に大打撃」)で紹介したように、中国からの輸入が減ることで、いろんな食品に影響が出ている。

 野菜とその加工食品の輸入量は06年には208万トンだったが、16年には168万トンまで減少。そのあおりで、野菜の値段は中長期で見ると上昇している。東京都中央卸売市場の価格を12年と16年で比較すると、ニンニクやショウガ、ゴボウやニンジンなど中国からの輸入が減った野菜は軒並み値上がりしていた。

 中国農業の衰退や貿易戦争は日本の食卓にも及ぶ。消費者にとっては日本の農家に頑張ってもらい、「食の安全・安心」を守ってほしいが、先行きは厳しそうだ。

 中国の農業の立て直しはうまくいっておらず、貿易戦争は長引いている。日本も海外から農業分野の市場開放を求められている。日米二国間の貿易協定に関する交渉が、来年1月半ばから本格化する。米側は中国に突きつけたのと同じように保護主義的な要求を前面に出し、事実上のFTAを結ぶよう迫ってくる。

 私たちの食卓が将来どうなるのか。米中はもちろん、日米の交渉の行方からも目が離せない。

週刊朝日  2019年1月4‐11日合併号より抜粋