
本書は、アリン・シプトンが、ジャズを取り巻く数々の神話や憶測を検証し、広範な情報を興味深く著した、極めつけのジャズ史『ア・ニュー・ヒストリー・オブ・ジャズ』の最新改訂版である。
サンフランシスコ・ブルテンの1913年3月号が、生気と活気にあふれるダンス・ミュージックを称して、“ジャズ”なる新語を造り出したーーそれは、20世紀という節目において、ニューオリンズで人気を博したバンドのシンコペートされた演奏を表し、アフリカとヨーロッパの音楽を融合した熱烈なサウンドは、シカゴやニューヨーク、さらには世界各国で、広く受け入れられることになる。
やがて、“ジャズの時代”として知られる狂乱の1920年代を迎え、その音楽スタイルは、デカダンス、酒宴、セックス、ダンスと永遠に結びつく。
著者シプトンはまず、ジャズが誕生した経緯を精査するーーそのパイオニアを吟味し、歴史を精密に記す上での難点を明らかにし、発展に関する因習的な見解の真偽を問う。
シプトンは、ジャズの歴史が概して、アンダーグラウンドのクラブ、地域特有のスタイル、付随的なエレメントによって大きく特徴づけられているため、そのルーツを辿るという従来の試みでは、全体像を捉えるに至らなかったと主張する。そして、その芸術様式が、レコーディングの進化、新しい楽器の導入、著作出版権の確立にともない、バイユー(ミシシッピ川下流域)・ルートからさまざまな都市部へと伝達され、ついにはアメリカの国境を越えて普及した経緯を探る。またシプトンは、創成期からジャズをインターナショナルな音楽として位置づけ、1920年代以降の国外におけるジャズの重要な進化を例証する。
ここには、ルイ・アームストロングからマイルス・デイヴィスまで、あるいはシドニー・ベシェからチャーリー・パーカーやジョン・コルトレーンまで、ジャズ史を築いたあらゆるビッグネームが登場する。だがシプトンは、1967年のコルトレーンの死去と共に、ピリオドを打つ多くの歴史家と一線を画し、コルトレーン以後の40年にわたるジャズの主立った動向、すなわちフリー・ジャズ、ジャズ・ロック、ワールド・ミュージックの影響というジャズの変遷をも綴る。
本書『ア・ニュー・ヒストリー・オブ・ジャズ』は、キース・ジャレット、ジョン・メデスキ、ダイアナ・クラール、エスビョルン・スヴェンソンといったミュージシャンに関する記述や、ヒップホップにまつわる新たな章を加え、最新事情を網羅した、まさにジャズ史の決定版である。
●著者紹介
アリン・シプトンは、ロンドン・タイムズ紙のジャズ評論家であり、BBC放送のジャズ・ラジオ番組のプロデューサー及びMCを務める。また、彼は音楽書の著作家であり、発行人及び編集者でもある。シプトンは、スミソニアン・アンソロジー・オブ・ジャズの編纂にも名を連ねている。