いまは結婚しない世代も増え、おじやおばも自分の愛情を過剰に甥や姪にかけてしまうこともある。子供の「ありがとう!」という感謝の言葉や笑顔は、自分に対するわかりやすいプラスの評価だ。人間はどうしてもプラスの評価を快感に思ってしまうため、祖父母のみならず、おじおばもついついタガがはずれがちになってしまう。

「そうでなくても少子化の時代ですから、血縁関係のある子供を大切に育てていく大人たちの気持ちもわかります。しかしやはりものごとには『程度』と『限度』が大事なのです」

 また児童心理学が専門で、育児相談室「ポジカフェ」を主宰している佐藤めぐみさんは言う。

「子供を『甘えさせる』ということと『甘やかす』ということを混同しないようにすることも大切です。『甘えさせる』では、子供が求めている精神的な距離感を大事にしつつ、自立を踏まえた場面ではあえて見守ります。でも『甘やかす』は、子供が乗り越えるべきチャレンジや我慢を大人が代行してしまうことであり、子供が歩む道を大人が先回りして平坦に整えてしまうことなのです。もし同居や近居で孫と接する機会が多いのであれば、祖父母はパパ・ママが引いているしつけの線を尊重して、勝手な先回りはしないことです」

 頼まれてもいないのに祖父母が「孫の親」の子育てに口をはさむのも厳禁だと、尾木さんも指摘する。

「祖父母というものは、『口八丁手八丁』ではなくて、『口半分手半分』くらいにしておいたほうが、全体の平和が保たれるのですよ」

 そのためには「孫の親」自身も、より親としての自覚を持つことが必要だろう。
「忙しくても、やはり『孫の親』が孫のことを祖父母に丸投げしてはいけないのです。また祖父母のほうも、丸投げを受けてはいけません。これとこれは手伝うよ、という明確な線引きが必要です」(尾木さん)

 前出の佐藤さんは現在ドイツ在住だが、今までフランス、オランダで自身の子育てをしてきている。

「欧州も共働き夫婦は非常に多いです。しかし夫婦共に17~18時には帰宅しますから、家族で過ごす時間は日本よりも圧倒的に多い。女性の働き方よりも、むしろ男性の働き方に大きな違いを感じますね。こちらには夜、仕事のあとに飲みに行くといった習慣もありませんし。オランダは13年のユニセフの『先進国における子どもの幸福度』調査で31カ国中の1位になりました(日本は6位)。その理由は、こうした点にもあるのかもしれません」(佐藤さん)

週刊朝日  2018年12月28日号より抜粋