「再現なんて、酷すぎる!」

 少し前、知人の弁護士にそう訴えると、「仕方ないのよ」と言われたことがある。彼女が言うには「証言と矛盾がないか調べるために、再現は必要なんですよね。嘘をついてる可能性もあるので」と。は? 私はあなたに説明を求めたのではなく酷さを確認したかっただけなんだよ?……とは声に出せず、ただ胸が詰まり、また無になる。こんな「環境」で、被害者は自分の声を通さなければいけないのか。

「人形を使ってレイプ再現を被害者にやらせる」国は、私が調べた限り日本以外にない(詳しい方、教えてください)。韓国の法曹界の人に聞くと、「日本の警察は文書主義ではないのか?」と驚かれた。「被害者の証言を捜査で検証するのが警察の仕事。被害者に再現させる意味がわからない」と。ちなみに韓国も、以前は子供や知的障がいをもつ被害者に人形を使うことはあったそうだ。再現ではなく、言葉で説明できない部分を指さしなどで補い、犯人の特徴を特定するためのものだった。

 日本の#MeTooの扉を開いた伊藤詩織さんが自身の性暴力被害について記者会見を開いた時、「ブラウスの胸のボタンを開けすぎている(←だから、被害者のはずがない)」と批判する声が小さくなかったことを思い出す。

 被害者とはこうあるべきだ、という「妄想」にとりつかれ、「正しい被害者」「正しくない被害者」を分ける。彼らにとっての被害者は「本当の被害者ならば声を出せないはず」という加害者都合の妄想だ。

 性暴力の妄想と無知につける薬はあるのか。これもフェミの仕事か。日本のフェミはやること多すぎる。

週刊朝日  2018年12月21日号

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