ウェブを使った新しいジャーナリズムの実践者として知られるジャーナリストでメディア・アクティビストの津田大介氏。“情報過多”であるがゆえの弊害について解説する。
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今の社会は情報が多すぎる──NHK放送文化研究所が12月1日に公開した調査結果(今年6月に実施)によると、10代から60代まですべての年代で8割以上がそう考えているという。インターネットやソーシャルメディアが普及した現代社会は、以前とは比べ物にならないほどに流通する情報の量もスピードも増してきている。そうした情報過多の環境は、社会にどのような影響を及ぼしているのだろうか。
全年齢層が「情報が多すぎる」と感じていたとしても、日常的に接しているメディアは世代によって大きく異なる。「毎日利用しているメディア」に関する設問をみると、50、60代の高年層は主にテレビや新聞を挙げている。これに対し、10~40代の若年、中年層では、ソーシャルメディアがトップで、テレビを上回っていた。
調査からは、高年層はテレビや新聞に、若年層はネットに偏り、中年層はその両方に接しているというふうに、世代による違いがはっきりと見てとれる。「情報過多感」を持っているといっても、世代によってその感じ方は異なっているということだ。
実際に若年層では、「自分が知りたいことだけ知っておけばいい」「必要な情報を得るときは時間をかける」「知りたいことについて、すぐ情報が得られないと気がすまない」といった傾向が強く見られる。まさにネットを日常的に利用する世代ならではの感覚だろう。調査ではこの点をさらに掘り下げ、ネットやソーシャルメディアに日常的に接する39歳以下の若年、中年層の意識に焦点を当てて分析した。
その結果「情報が多すぎる」と感じている人は、そうでない人に比べて「自分が知りたいことだけ知っておけばいい」と考える人の割合が多い。少ない情報源から情報の入手に時間をかけず、さまざまなメディアの情報を見比べない傾向が見られた。ニュースとの接し方でも、若年層ほど受動的(たまたま気づいたものだけで十分)、選択的(好意的なものだけ知りたい)といった接触傾向が強く、興味関心の範囲も狭かったという。