

落語家・春風亭一之輔氏が週刊朝日で連載中のコラム「ああ、それ私よく知ってます。」。今週のお題は「盛る」。
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ライブの世界はまだまだ紙チラシ文化。お芝居に行くとぶ厚いチラシの束をもらいます。演劇のチラシは総じてセンスがいい。ただチラシに釣られて実際に芝居を観に行くと、内容が明らかに『チラシ負け』……みたいなことがあるので世の中難しいものです。
落語会のチラシもオシャレなものが増えてきましたが、いまだに筆ペンで必要事項を殴り書きしただけ……という果たし状みたいなチラシも見受けられます。ヤル気だけは伝わる。行ってみるとやっぱりヤル気だけだった……なんてね。
また一落語ファンが「落語会を開こう! でも予算がないので自らパソコンで作りました!」みたいなチラシ。これが一番たちが悪……いや、個性的だったりします。とにかく主催者の言いたいことを盛り込みすぎて訳のわからなくなってる『メガ盛りチラシ』が多い。例えばこんなかんじ。
一、タイトルが無駄に長い。『第○回 爆笑年忘れ △△落語会プレゼンツ 春風亭一之輔独演会 ~師走の饗宴~ supported by □□工務店』みたいな。一瞥しただけで胸焼け。『寿限無』かよ。スポンサー名も実は主催者の実家。
一、煽り文句も長い。「2012年に21人抜きで真打ち昇進を果たした一之輔がこの師走におくる粋な世界に浸りながら年の瀬を迎える喜びを感じつつ、我々はこれからの落語界に思いを馳せる夕べになるであろうことはまさに必然」みたいな。ゴシック体で縦書き。『日刊ゲンダイ』の1面か。
一、演者の写真をたくさん使いたがる。それも素人がデジカメで撮ったような粗い画像の。どうかすると撮影時期が違うものを交ぜるので、同一人物なのに顔が痩せてたり太ってたり、髪形が違ってたり。
一、会場への地図が異様にデカい。最寄り駅だけ載せればいいのに、なぜか左右両隣の駅まで広範囲に描いてある。チラシの2分の1が地図!