「母親にその話をしたら、『そういうの、流行(はや)っているの?』と。去年やった『エレクトラ』という舞台は、“親殺し”がテーマだったんです。親離れ子離れというか、自分のためにも親のためにも、“親殺し”は必要な時期かなと。今回、親父とは赤の他人の役ですけどね」

“母親”とは、歌手・UAのことだ。人気歌手と人気俳優を両親に持ったことに、複雑な感情をいだいた時期もあったという。

「幼少期は二人を親としては認めていませんでした。魂を削って表現している二人はやっぱり忙しくて、僕はおばあちゃんに育てられた。のちに別々のタイミングで、二人に謝られました。『自分たちはあなたに十分といえる時間を割いてあげられなかった』と。僕が小2のときに両親は離婚しましたが、それからのほうが親父との思い出は多いです。今は仲いいです」

 いわゆる“2世タレント”のなかには、親の話を好まない人も多い。ご両親の話題に偏ったことを詫びると、こんな返事が返ってきた。

「いえ、ぜんぜん気にしません。なぜなら、親が好きだから。“子バカ”じゃないですが、俳優として父を尊敬していますし、僕の中でUAは日本の女性ボーカルではトップです」

 自身の道をまっすぐ見据え、着実に歩みを進めているからこその言葉のように思えた。(本誌・野村美絵)

※週刊朝日2018年11月30日号